電子定款で4万円節約したつもりが…以外にコスト・手間のかかるその実態!
会社を設立する際には、「定款」を作成する義務があります。定款とは組織や活動などに関する根本規則(目的、商号、所在地、出資される財産の価額、発起人の氏名及び住所などの様々な事項)を記録した書類のことです。
株式会社設立の場合、定款の記載が法律的に正しいかどうかを、公証人に認証してもらわなければ効力をもちません。株式会社の場合の公証人によるこの手続きを「定款の認証」と呼び、公証役場にて手続きを行います(合同会社設立の場合にも定款が必要ですが、公証人の認証は必要ありません)。 参考: 会社設立完全ガイド
定款の作成は、従来、書面で作成しなければなりませんでしたが、平成19年からコンピューターで作成した電子文書による定款(「電子定款」)でも認証をうけることができるようになりました。
電子定款では、書面のときには必要であった収入印紙代の4万円が不要になるので、電子定款で認証を受けることが常識のように言われています。実態はどうなのでしょうか? 以下で検証してみましょう。
電子定款認証で節約できる!?
電子定款が簡単に作成できて費用もゼロであれば、単純計算で4万円の節約となります。しかし、電子定款はワープロで作ったデジタルデータであれば、全てが電子定款ではないのです。指定の電子データにするためのソフトウェアが有料であること、および面倒な処理を行わないといけないので、誰もが簡単、かつ費用ゼロでつくることができません。実際にどのような手間とコストがかかる作業なのかを、株式会社設立の場合を例に見ていきます。
電子定款作成の流れ
1.定款を作成
この作業は電子定款も書面での定款でも同じで、ワープロソフトで内容を作成します。
2.電子定款に変換
まず、電子定款に変換する前に、作成した内容が法律的に問題ないかどうかを事前に公証役場や法務局で確認してもらう必要があります。ここで間違っていると修正しなければならないので2度手間になります。
問題ないことが確認できたら、ワープロソフトで作成されたデータをPDFデータに変換します。このとき、ワープロデータをPDFデータに変換した経験がある方は、簡単と思われるかもしれません。しかし、電子定款にするためには、署名挿入機能が付いているPDFへの変換ソフトが必要です。
このソフトは、無料で手に入れることはできません。約35,000円で購入しなければなりません。他に利用できなければ、全額が電子定款の費用になります。
3.住基カード(住民基本台帳カード)の取得
「電子証明書」の取得に必要な住基カードを役所に申請します。手数料は500円ほどかかります。
4.「公的個人認証サービスの電子証明書」の取得
書面による定款に印鑑や署名を行うように、電子定款では、その代わりに電子署名が必要になります。これには、「電子証明書」を居住地の市町村で取得する必要があります。500円ほどの手数料がかかります。
5.ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む
電子証明書は住基カードのICチップに保存されるので、ICチップから保存された内容を読みだすために「ICカードリーダライタ」が必要です。費用は2,000円~6,000円程度です。
6.電子署名プラグインソフトで定款(PDF)に署名
読みだした内容を、PDFデータに付け加えるために必要なソフトが法務省のページから無料でダウンロードできます。このソフトを使って電子定款のPDFデータに付け加えます。
これで、ようやく電子定款が作成できました。
慣れていない場合は、かなり面倒な作業になります。また、慣れていても使わない可能性の高いソフトや機器を購入する費用が発生します。
しかし、まだこれで完了ではありません。
7.電子定款の認証手続き
今までの作業を行って作成した電子定款が正しいことを公的機関で証明を受ける必要があります。これが認証の手続きです。この作業は、法務省オンライン申請システムにユーザー登録をして行います。
以下の法務省「登記ねっと」に書かれている手順に沿って行います。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html
8.公証役場に行き定款を受け取り設立登記
すべての手続が完了したら、公証役場から定款を受け取ります。そして、電子定款で設立登記を行って、ようやく目的が完了です。
本当の意味での節約は
電子定款によって直接節約できる印紙代4万円は、その作成に要する時間、手間、費用を考慮すると「1から10まですべて自分で」というのは、一連の作業をこなせるスキルがあり、また、必要なソフト、ハードが有効利用できない限り、あまり効率的ではありません。
それを考えると、定款の内容を自分で作成し、電子定款に変換する作業だけを専門家に依頼するほうが賢明でしょう(4万円以下でそのサービスを行ってくれるところが多数です)。また、電子定款への変換だけでなく、比較的廉価で様々なアドバイスを行ってくれる税理士法人や行政書士・司法書士事務所などもあります。まずは、コストや手間を考えた上で、どの部分まで自分でやるか、どこから先を専門家に頼むか、切り分けを考えてみることが肝心です。
参考:
電子公証制度のご案内
http://www.koshonin.gr.jp/de2.html
法務省 登記・供託オンライン申請システム「登記ネット」
http://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/
ココホレ!独立・起業
http://entre.kokohore.net/company/e-teikan.html#03-3
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