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スターバックスの世界進出・業績回復を成功させたハワード・シュルツの経営手法

税理士 鳥川拓哉

この記事の執筆者 税理士 鳥川拓哉

ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori

その昔、アメリカ西海岸、シアトルのダウンタウンの端っこに、小さな、小さな珈琲豆専門店がありました。この小さなお店を1人で世界企業に育て上げた人物。それが、ハワード・シュルツです。彼の名前を知らなくても、スターバックスを知らない人はいないのではないでしょうか。

一歩店内に足を踏み入れると、そこはコーヒーの香りに包まれた憩いの場。カウンターの向こうでは、バリスタ達がコーヒー1杯1杯を丹精込めていれています。1日のスタートに、ランチ後に、ブレイクタイムに、いつ訪れてもクオリティの高いコーヒー、居心地の良い場所、そして笑顔があなたを出迎えてくれるのがスターバックス店舗です。

このスターバックスを世界企業へと成長させたシュルツの経営手法の秘密を探ります。

シュルツとスターバックスの関わり

1971年、大学時代からの友人であった英語教師、歴史教師、ライターの3人によって珈琲豆&器具の販売店、スターバックスの歴史の幕が開きます。10年後の1981年、スターバックスの取引先であったドリップメーカーの営業責任者をしていたシュルツは、プラスチック製フィルターを大量注文していた同店に興味を持ち、実際に店舗を訪れます。

豆の選択からロースト法、その豆を買っていく人々への真摯なアドバイス、スターバックスに注がれたオーナー達のこだわりとその姿勢にシュルツは感銘を受け「ここで働きたい」と懇願、マーケティングディレクターとしてチームに加わることからシュルツのスターバックでの人生が始まります。

美味しいコーヒーの提供と居心地の良い場所の両方の提供

スターバックスの一員となり、コーヒー豆の買い付けにイタリアを訪れていたシュルツは、質の良いエスプレッソをゆっくり楽しめる居心地の良い空間に衝撃と感激を覚えます。それはイタリア人の生活の一部となっていたコーヒーを中心として提供するカフェバールです。シュルツは、その居心地の良さと数の多さに驚愕します。

そして、「ここは、ただコーヒーを飲んで、一休みする場所ではない。ここにいること自体が素晴らしい体験となる劇場だ」とシュルツは感じ、帰国後、オーナー達にイタリアのカフェバールのようなコーヒーを楽しむ空間を作ろうと提案しますが、オーナーに断られます。

自分の直感を信じて疑わなかったシュルツは、ためらうことなくスターバックスを退社し、自身の理想を実現するコーヒーチェーン店を新たにスタートさせます。それは、イタリアでの理想を実現したもので、店はすぐに人気店となり、シュルツは退社したスターバックスを380万ドルで買収するほどになります。

「本当に作りたかったのは、居心地の良い場所です。深煎りコーヒーだけではありません」と語るように、シュルツはクオリティの高いコーヒーの提供だけではなく、人と人のつながりを大切にできる場所と良い雰囲気を提供することを目標に掲げ、そのために欠かせない最高の人材の確保に力を入れます。

スターバックスの成功の秘密はシュルツが実感した美味しいコーヒーと同時に居心地の良い場所の提供をコンセプトにした店舗であり、居心地の良さを実現するための従業員教育という経営手法ではないでしょうか。

従業員の喜びと満足

企業と商品、顧客の間には、それに関わる多くの人がいます。シュルツが目指すスターバックスには、最高のスタッフが必要でした。美味しいコーヒーを作れるかだけではなく、店に足を踏み入れる顧客の一人ひとりが心地よく店を出て行けるようサポートができる人材です。

「ブランドは愛されなければなりません。そのためには、まず従業員が会社を愛していないと始まらない。最も大事なのは現場の愛なのです」とシュルツは考えました。

ニューヨーク州ブルックリンの決して裕福とはいえない家庭で育ち、仕事で大怪我をしたその日に労災も解雇手当もなく突如解雇されてしまった父親を見た経験から、従業員を大切にする企業を作りたかったというシュルツ。シュルツは、彼らをビジネスパートナーと呼び、通常は正規雇用されている従業員のみに与えられる健康保険やストックオプション制度を週20時間以上勤務するパートタイマーにまで適用します。

信頼し権限を与え、従業員が目標達成のために自主的に頑張れる環境をシュルツは作り上げました。従業員の自立を促し、それを支援すると同時に、必要な時にはいつでもサポートするというシュルツの考えは、従業員の能力を最大限に発揮させることは、どんな企業にも成功のための必要な要因の1つです。

奇跡といえる世界展開に成功

ハイテク技術を駆使した最新の電化製品とは違い、コーヒーは世界中で古くから親しまれてきた身近でありふれた商品です。その平凡といえるコーヒー店をどうやって世界展開させたのでしょうか?

1996年、スターバックスは、海外第1号店を東京にオープンさせました。米国内で成功をもたらした、長居したくなるような照明やソファ、オープンテラス、そして教育の行き届いたスタッフ、また当時の日本では、まだ珍しかった店内全面禁煙を掲げたことで、開店と同時に大人気店となりました。スターバックスでコーヒーを飲むということが、一種のステータスとなったのです。

質の良いコーヒーを提供するというだけでは、差別化が難しいので、成し遂げられなかった可能性のある世界展開をシュルツは、コーヒーを楽しむ居心地の良い空間という付加価値をつけ、コーヒーを1つのブランドとして売りだすことで世界展開に成功します。

その結果、スターバックスは、今では世界最大のコーヒーチェーン店となり、世界62カ国、2万店舗以上(2013年3月現在)で、2012年度の売上は130億米ドルを超える規模にまで拡大します。

イタリアでエスプレッソを注文したその日から信じて疑わなかったシュルツ自身の信念を貫き通すことで、コーヒーチェーンの世界展開を成功させました。その秘密は、シュルツがイタリアで感じた心地よい場の提供を忘れず、それを実現させるための努力を決して怠らなかったことが成功の大きな要因の1つです。

シュルツのCEO退任から始まるスターバックスの業績低下

1992年から年平均成長率49%という驚異のスピードで成長を続けてきたスターバックスは、シュルツが、2000年、海外展開に更に力を入れるためにCEOを後任に託したことから業績の転落が始まります。

しばらくは、順調に店舗数を増やし成長を続けていたかのように見えましたが、米国内での無理な出店計画によって、人材の不足、クオリティの低下、飽和感の醸成、最寄りの店舗が50m先にあるという無茶な出店などが原因で、創業後、初めて客足が鈍ります。対策のために、企業ポリシーに沿わない商品開発まで行われましたが、失敗します。そして、スターバックスというブランドは崩れていき、2008年には赤字に転落します。

シュルツがCEO復帰し実行した再生プラン

最大の危機を乗り切るため、2008年にCEOに復帰したシュルツが真っ先に取り組んだのは、スターバックスブランドイメージの再構築です。

その対策は、中途半端なものではなく「米国内のスターバックス全7100店舗を一時的に閉鎖、バリスタの再教育」を何百万ドルという損失を出してまで実施し、スターバックスは立ち直るという強いメッセージをマーケットと顧客に訴えます。

そして同年、ハリケーン・カトリーナで大きな被害を受けたニューオーリンズでの、リーダー会議開催を決定しました。ハリケーンの襲来後3年たってもなかなか復興の進まなかった地域に巨額な予算を投じるだけではなく、シュルツ本人も含め累計5万時間にも及ぶ1万人規模のボランティア活動を行ったのです。その生産性は通常のボランティアの2倍に近いもので、共に働いたNGOを驚かせたといいます。

赤字の状況下でも、従業員を大事にするシュルツの強い思いに迷いはなく、ボランティア活動を期にシュルツの思いはスターバックス従業員とマーケットに強く伝わります。

その後も、コーヒーの良い匂いを妨げる商品は、売上を犠牲にしても廃止するなどのシュルツの改革は続きました。しかし、あらゆる手をつくしても、大幅下落した株価を元の水準まで上昇させるには至らず、やむなく最終手段であった赤字店舗の閉鎖に踏み切ります。その数、約600店。何よりも、ビジネスパートナーである従業員を大事にしてきたシュルツは、解雇せざるを得なかった仲間を思い、同じ過ちは二度と繰り返さないと誓います。

それからわずか2年後、シュルツの適切で大胆な改革によって客足は完全に戻り、翌年の2011年には過去最高利益を記録するまでになります。世界展開、そして赤字からの回復と難しい奇跡をシュルツは2度も成し遂げます。その年、シュルツはフォーチュン誌が選ぶ「Business of the year」に選出されました。

シェルツの従業員を大事にする経営手法は、今の日本企業から失われつつある家族経営主義と呼ばれる日本的経営を思い出させます。かつて、日本企業の強みと言われた日本的経営が、スターバックスのビジネスコンセプトにマッチして、スターバックスを成長させています。

まとめ

スターバックスの実質的な創業者であるハワード・シュルツは、イタリアで、コーヒーをゆっくり楽しめる居心地の良い空間のカフェバールに、ここはコーヒーを飲んで、休むだけの場所ではない、居ること自体が素晴らしい体験になる「劇場」だと感激します。このコンセプトを経営理念にまで高め、それを実現するために経営理念が要請する行動規範を従業員に落とし込んでいます。その結果が、スターバックスの成長、世界進出の成功の大きな要因となっています。

参考:

「24時間仕事バカ!」の熱狂人生 スターバックスコーヒーカンパニーCEO ハワード・シュルツ
http://goethe.nikkei.co.jp/human/120628/index.html

カンブリア宮殿・・・スターバックス会長兼CEO ハワード シュルツさん
http://riverstar.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/ceo-1471.html

Biography: Howard Schultz
http://www.myprimetime.com/work/ge/schultzbio/


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