失敗しない会社設立パーフェクトガイド

目次

1.会社設立の基本的な流れ

【1】基本的流れ
【2】会社設立の費用
【3】会社設立のSTEP
STEP1 設立内容の決定
STEP2 目的のチェック
STEP3 印鑑の作成
STEP4 定款認証
STEP5 出資金の払い込み
STEP6 登記申請書類の作成
STEP7 登記申請する
STEP8 会社設立完了
STEP9 税務関係手続き
【4】起業をする方から特に質問をいただく内容
①「資本金」の意味、金額の決め方、足りなくなった時は?いつから使えるか?
②「事業年度」の決め方
③「商号」後悔しないための商号の決め方 5つのポイント
④「ドメイン」会社設立時に失敗しないためのドメインの決め方とは
⑤「会社設立日」を決める際の六曜について

2.会社設立かメリット・デメリット、起業するなら個人事業?それとも法人?

3.株式会社だけじゃない!会社設立前に知っておきたい「会社の種類」

【1】会社の種類
【2】合同会社(LLC)とLLPを知る!
【3】選ぶなら株式会社か合同会社

4.物語でわかる!失敗しない会社設立のルール

【1】失敗しない会社設立のルール1 「資本金の額」
【2】失敗しない会社設立のルール2 「事業年度」
【3】失敗しない会社設立のルール3 「青色申告」
【4】失敗しない会社設立のルール4 「役員報酬」
【5】失敗しない会社設立のルール5 「源泉所得税」
【6】失敗しない会社設立のルール6 「経費性」
【7】失敗しない会社設立のルール7 「創立費」
【8】失敗しない会社設立のルール8 「生命保険」
【9】失敗しない会社設立のルール9 「融資」
【10】失敗しない会社設立のルール10  「助成金」

5.会社設立に際して起業家が押さえておくポイント

【1】会社設立前に、会社がつぶれていく理由を知っておこう
【2】起業家で成功した人はどうやって自分の「やる気」を維持させてきたのか?

6.【マンガでわかる!】会社設立後に税金で損しないポイント

【1】システム開発、WEB制作会社は社員の給料が全員経費にならない!
【2】情報起業、アフィリエイトの収入は入金したときが売上ではない!
【3】IT系の会社は要注意、消費税の課税方法の選択を間違うと大変!!
【4】税金は払いたくない!脱税した田中さんに税務署がやってくる!
【5】過大な節税は禁物! 消費型節税のワナにはまった鈴木さん。

7.公的機関のサービスはここまで使える

【1】東京の会社設立
【2】大阪の会社設立

1.会社設立の基本的な流れ

【1】基本的流れ

まずは会社ができるまでの基本的な流れについてご説明します。
まず知っていただきたいのは会社を作るには順番があるということです。
その順番を簡単にまとめたのが、上のフローチャートです。

例えば登記は定款認証の後でしかできませんし、出資金の払い込みも期間が決まっています。

すべて同時並行ではできないのです。

ひとつずつ順番どおりにしていかなくてはいけません。

どれくらいの時間がかかるかと言いますと、場合にもよりますが、

これくらいの時間を見ておけば余裕があるでしょう。

急げば最短で「STEP1~STEP7」まで1週間ほどで作ることも可能ですが、大事な会社の設立です。

じっくり決めることを決めて設立の手続きを進めることをお勧めします。

さてここで市販の本などには書かれていない重要なポイントを一つお知らせします!

「STEP1」から順番にしていくのですが、「STEP1」に取り掛かる前に決めなければいけないことが一つあるのです。

言うなれば「STEP0」ですね。

それは「STEP7」の「登記申請日をいつにするか」です。

なぜなら登記申請日をいつにするか考えないで「STEP1」から始めてしまうと、
自分が希望する「登記申請日」=「設立記念日」に会社を作れない可能性があるからです。

結構、設立記念日って重要ですよね。

大安にするか、誕生日なんかの記念日にするか、「末広がり」の8の付く日にするか。

こだわりがある方はまずは「登記申請日」を決めて、そこから日程をさかのぼって「いつまでに何をしなければいけないか」を考えてください。

【3】会社設立のSTEP

では各ステップについて簡単に見ていきましょう。

STEP1:設立内容の決定

設立内容で決めなければいけないことは、

の8つです。

【特別付録3】の「Ⅰ.会社概要」のところに、決めなければいけないことが全て一問一答方式でまとめておきました。

このQ&Aが埋まれば自動的に設立要項が決まるようにしてあります。

ご利用ください!

ここで決めた内容は「STEP2」の定款を作る際に必要になる事柄です。

STEP2:目的のチェック

「STEP1」で作った事業目的は「定款」に記載します。

「定款」とは、会社名や事業目的など会社の基本的なことで重要なことが記載されている資料のことです。

よく「定款は会社の憲法」と言われます。

つまり、日常の営業活動で頻繁に使ったりはしませんが、
基本原則などを定めてあるものと思えば良いでしょう。

会社の全体像や組織についてのルールを定めるものと思ってください。

「定款」は公証人役場で認証をしてもらうのですが、そのときに具体性がなかったり、外国の文字が入っていたり、法律上認められない事業を記載したりしては認証されません。

また実際はある程度「お決まりのフレーズ」を使うことが望まれます。

さらに事業目的は会社の登記簿謄本にも載ってきますので、取引先や業務提携先にも見られるものです。

あまり奇抜なものを挙げておくと事業目的を疑われる可能性もあります。

公的な許認可申請をしなければいけない業種ですと、定款に必要な事業目的がないと許可申請が降りないことがあります。

許認可が必要な業種をいくつか例を挙げますと、

などがあります。

これ以外にも許認可が必要な業種は1000以上ありますので、自分が行っていこうとしている業種は許認可が必要でないかどうか確認しておきましょう。

最近ではインターネット通販の大手サイトも定款に「通信販売業」という項目があるかそうか確認するようになってます。

こういった点に注意をしながら最後に「上記に附帯する一切の業務」という一文を入れておいてください。

これで関連する事業が制約なく行えるようになります。

STEP3:印鑑の作成

会社を設立するには会社の印鑑が必要になります。

実印や銀行印、角印、ゴム印などです。

街のハンコヤさん以外でも最近はネットでも安く早くできるようになりました。

大手のハンコ屋さんとしては「ハンコヤドットコム」さんが有名です。

http://www.hankoya.com

会社名が決めれば、「字体」や「ハンコの素材」「サイズ」などを決めて、業者さんに作ってもらってください。

参考にですが、字体で人気があるのは「テン書体」のようです。

日本の紙幣と同じ字体ですね。

設立登記をするときに会社のハンコが間に合わないということにならないよう、早めに作っておきましょう!

またもし発起人になる人が個人の印鑑を実印登録していないのであれば、書類作成で必要になりますので市役所で登録しておいてください。

STEP4 定款認証

会社設立の一つ目の山場が「定款の認証」です。

この「定款」は、作成後に「公証人役場」という役所で認証してもらいます。

つまり内容に不備がないかなどを公証人に確認されるということです。

書き方や表現方法は決まりがあって、厳しく審査されます。

例えば住所を「1-1-1」と書いてはいけません。

「一丁目1番1号」と書かなければいけないのです。

定款の内容は「STEP1」や「STEP2」で決めた事を使って作成します。

他にも公告の方法や株式の譲渡制限に関することなど記載事項は多岐にわたります。

大きく分けると

の3つになります。

「STEP1」や「STEP2」で決めた事柄は絶対記載しなければいけない事項です。

一つでも欠けていると定款自体が無効です。

公証人役場の認証を受けることはできません。

もし自分で定款を作成する時間がなかったり、自信がない方は専門家に任せるほうが良いでしょう。

なお定款の認証には株主全員の印鑑証明、収入印紙4万円、定款認証手数料5万円、定款3部を公証人役場に提出する必要があります。定款を電子定款にすれば収入印紙代4万円はかかりません。

代理人が行く場合には委任状も持参してください。

問題がなければ1時間程度で認証され、修正がある場合は可能であればその場で訂正し、修正が不可能であれば再提出することになります。

STEP5:出資金の払い込み

定款が無事に認証されると、いよいよ資本金を払い込みます。

定款には、一株がいくらで、各発起人が何株分を出資するかなどを記載しなければいけません。

これに基づいて資本金を払い込むのです。

このときによく質問されることがあります。

それは「どこにお金をり込むのか?」ということです。

会社の資本金なので会社の通帳に振り込むような気がしますが、ちょっと待ってください!

会社の通帳は会社設立後でしか作れないのです。

ではどこに振り込むかというと「株主(発起人と言います)」の個人口座になります。

もし株主が自分ひとりでのときは、「自分で自分の口座」に振り込むのです。

ちょっと変な感じですね。

注意点があります。

それは「資本金にしたい金額」をふりこまなければいけないのです。

残高が資本金になるようにするのではありません。

例えば、資本金を100万円にしたければ、100万円ちょうどを振り込むのです。

残高が100万円になるようにするのではありません。

それも振込み人の名前が印字されるようにふりこまなければいけません。

よく勘違いされるところですのでご注意ください。

振込みが済むと、振り込んだことが記載されている通帳のコピーが「払い込みの証明」になります。

これとは別に、金融機関名・支店名・口座番号・口座名義人が記載されたページ(通常は通帳の表紙を1枚めくったところ)もコピーしておいてください。

「払込みがあったことを証する書面(証明書と言います)」と上記の2つのコピーをホッチキスで重ねて留め、会社の実印を押すと提出する書類の一つが完成です。

STEP6:登記申請書類の作成

資本金の振込みが終われば、今度は最後の関門「法務局」に提出する書類作りです。

法務局とは登記関係の仕事を行う役所で、この法務局に認められると晴れて「会社設立」となります。

提出する書類は多岐に渡ります。

簡単に挙げると、

などが必要になります。

設立の方法によっても必要書類が変わりますので、不備がないか十分吟味して作成しなければいけません。

また上記の登記申請書以外にも「印鑑届出書」を出す必要があります。

これは会社の実印を登録するためのものです。

個人であれば実印の登録は任意ですが、会社は必ず実印を登録しなければいけません。

STEP7:登記申請する

法務局に提出する書類が揃えば、いざ申請です。

登記の申請は本店所在地を管轄する登記所(法務局または支局・出張所)で行います。

登記所が申請書類を受理した日が設立日として公に認められます。

「STEP0」でも言いましたが、大安などの日取りが気になる方はこの日を、まず最初に決めなければいけません。

登記とは、会社の基本情報や重要事項を登録し、一般に公開する制度のことで、会社同士の安全かつ円滑な取引を図るためのものです。

申請手続は、原則として会社の代表者(または代理人)が登記所に出向いて行います。申請には期限が決められており、取締役による調査(株式の払込が済んでいるか、設立が法律や定款に違反していないかの調査)、または発起人が定めた日から2週間以内に申請することが義務づけられています。

STEP8:会社設立完了

登記所に登記申請をすれば、その場ですぐに会社の設立が認められるわけではありません。

提出後、登記官によって審査がされます。

書類に不備があった場合は補正(訂正)を求められます。

補正の結果が出る日のことを補正日と言いますが、申請した日から補正日まで約1週間ほどかかります。

つまり、問題がなければ約1週間くらいで補正日になり、会社の設立が正式に認められることになるのです。

これでやっと登記完了です。

登記が完了すると登記簿謄本と印鑑証明が手に入ります。

登記簿謄本や印鑑証明は会社の通帳を作ったり、事務所を借りたり、税務署への届出をしたりするときに必要になるものです。

いよいよ銀行口座を開いて、事務所を契約して、あなたの会社が本格的に始動することができるようになります!

STEP9:税務関係手続

登記所への手続きが終わってほっとしてはいけません。

まだ手続きが続きます。

各役所への届出です。

本当に重要なのはこれ以降の手続きと言っても良いでしょう。

なぜならこれからの書類は提出期限が定まっているものが多く、もし提出期限までに提出しなければ不利な条件を強いられることになるからです。

役所の方から督促などはないので、忘れていても誰も注意してくれないことも怖いところです。

具体的には、税務署、都道府県税事務所、市役所、社会保険事務所、ハローワーク、労働基準監督署などに設立関係の書類を提出しなければいけません。

正直、作る書類は多いです。

1枚1枚の書類の内容も専門的で難しい。

さらに選択しなければいけない項目では、選択した結果で有利・不利が生じることがあります。

これらの書類は専門家に任せるか、自分で作るときは十分な下調べをすることをお勧めします。

特に税務署への提出は期限があり、その期限以内に提出をしないと有利な規定が受けられなくなったりします。

十分ご注意ください!

【4】起業をする方から特に質問をいただく内容

「資本金」の意味、金額の決め方、足りなくなった時は?いつから使えるか?
「事業年度」の決め方
「商号」後悔しないための商号の決め方 5つのポイント
「ドメイン」会社設立時に失敗しないためのドメインの決め方とは

「会社設立日」を決める際の六曜について

先勝(さきがち・せんしょう)

「先んずれば即ち勝つ」の意味で、万事に急ぐことが良いとされています。
「午前中は吉、午後二時より六時までは凶」と言われます。

友引(ともびき)

「凶事に友を引く」の意味で、「勝負なき日と知るべし」といわれ、勝負事で引分けになる日、つまり「共引」とされています。
「朝は吉、昼は凶、夕は大吉。」と言われます。

先負(さきまけ・せんぶ)

「先んずれば即ち負ける」の意味で、「小吉」「周吉」と書かれ吉日とされています。万事に平静であることが良いとされ、勝負事や急用は避けるべきとされます。
「午前中はわるく、午後はよろしい」ともいう。

仏滅(ぶつめつ)

「仏も滅するような大凶日」の意味で、六曜の中で最も凶の日とされ、婚礼などの祝儀を忌む習慣があります。
この日は六曜の中で最も凶の日とされ、婚礼などの祝儀を忌む習慣がある。この日に結婚式を挙げる人は少ない。そのため仏滅には料金の割引を行う結婚式場もある。他の六曜は読みが複数あるが、仏滅は「ぶつめつ」としか読まれない。
「何事も遠慮する日、病めば長引く、仏事はよろしい」ともいわれる。
また『物滅』として「物が一旦滅び、新たに物事が始まる」とされ、「大安」よりも物事を始めるには良い日との解釈もある。

大安(たいあん・だいあん)

「大いに安し」の意味で、六曜の中で最も吉の日とされています。何事においても吉、成功しないことはない日とされます。しかし、本来はこの日に何も行うべきではないとする説もあり、キリスト教やユダヤ教における安息日に相当すると言われています。

赤口(しゃっこう・せきぐち)

陰陽道の「赤舌日」という凶日に由来して、午の刻(午前11時ごろから午後1時ごろまで)のみ吉で、それ以外は凶とされます。
「赤」という字が付くため、火の元や赤字や死を連想されます。

2.会社設立かメリット・デメリット、起業するなら個人事業?それとも法人?

これから事業をはじめる方からの典型的な質問の一つは「個人事業と会社組織とどちらがいいでしょうか?」というものです。

その方の置かれている状況や、どのような事業をしたいのか等によって変わりますので、どちらがいいとは一概に言えません。

個人事業からはじめて、軌道にのってきたら法人化するというケースもよくあります。個人事業は開業届を出すだけではじめられますので手軽です。

法人は、法務局に登録(登記)をする必要があります。登記は個人でいう出生届のようなもので、登記をすることで新たに法人が誕生したことが認められるのです。個人事業と比べて手続きに時間と金額がかかりますが、対外的信用度が高い、税制上有利になるなどのメリットがあります。

個人事業と法人、それぞれの特徴を比較し、検討してみてください。

個人事業 法人
設立のしかた 登記不要。税務署などの役所へ開業届を行う。 定款作成と登記が必要。費用は25~45万円くらい。
事業年度 1月から12月の暦年 自由に選べる
代表者の扱い 自らの給与は経費にならない。 代表取締役となって会社から給料(役員報酬)を受け取ることができる。
対外的信用・イメージ 法人でないと取引に応じてもらえないこともある。 個人事業に比べ、対外的信用度が高く、企業イメージもよい。優秀な人材を確保しやすい。
赤字の繰越控除 赤字の金額は翌年以後3年間の黒字金額から引くことができる(青色申告の場合)。 赤字の金額は翌事業年度以後7年間の黒字金額から引くことができる。
交際費の取扱い 業務の遂行上、必要と認められるものについては経費計上が可能。 期末資本金1億円以下の法人は、年間400万円までについては90%まで損金参入。
社会保険への加入 原則として5名までは社会保険の加入は自由。 社長1人の会社でも社会保険に加入しなければならない。

詳しい解説はこちら⇒会社設立するか個人事業でいくか? メリット、デメリットとは

3.株式会社だけじゃない!会社設立前に知っておきたい「会社の種類」

【1】会社の種類

会社を設立するというと、株式会社のことがまっさきに思い浮かぶのではないでしょうか。
最も広く知られている会社と言えばやはり株式会社で、数から言っても90%以上を占めます。

会社とは、一般に営利を目的として事業活動を行う法人を言いますが、正確には平成18年5月から施行されている「会社法」に規定されています。会社法では、株式会社以外にも合名会社・合資会社・合同会社について定めています。

1.株式会社

出資者である株主に対して株式を発行することで設立される会社形態のことを言います。出資者は出資した金額の範囲内において有限責任を負います。資本(出資者)と経営(社長)は分離しており、経営者が利益を出資者に分配するというスタイルになっています。ただし、中小企業の場合、株主と社長が同一であることがほとんどです。

2.合名会社

社員(=出資者)が会社の債権者に対し直接連帯して責任を負う「無限責任社員」だけで構成される会社形態のことをいいます。以前は2名以上の無限責任社員が必要でしたが、会社法施行に伴い、1名のみの合名会社も認められるようになりました。

3.合資会社

「無限責任社員」と「直接有限責任社員」とで構成される会社形態です。直接有限責任社員は、出資金の範囲内で限定的に責任を負うのですが、会社債権者に対しては「直接責任を負う(無限で責任を負う)」こととなっています。

4.合同会社

「間接有限責任社員」のみで構成される会社形態を言います。間接有限責任社員は、「出資額の範囲内においてのみ責任を負う」ということになっており、個人的に連帯保証人や担保提供者等になっていない限り、出資額以上の責任を負うことはありません。

【2】合同会社(LLC)とLLPを知る!

合同会社(LLC)を知る!
LLPを知る!

会社設立はお任せください

【3】選ぶなら株式会社か合同会社

合名会社・合資会社は、社員(=出資者)が出資額の範囲を超えて責任を負うことになります。設立時の費用がおさえられたり、事務手続きが簡単だったり、決算公告の義務がないため毎年決算書を公表しなくていいなどのメリットはあるのですが、経営陣が直接リスクを負うこれらの形態をあえて選ぶ人は現在はほとんどいません。

一方、合同会社は株式会社と同じく「間接有限責任」、つまり出資者が出資した範囲内で限定的に責任を負うことになっており、この形態を選ぶ人はいます。

合同会社とは株式会社を小さくしたようなイメージで、小規模な事業をするのに向いています。設立コストがおさえられ、決算公告の義務がありません。

ですから、会社を設立して事業をはじめる際には、株式会社か合同会社のいずれかを選択することが多いのです。

4.物語でわかる!失敗しない会社設立のルール

【1】失敗しない会社設立のルール1 「資本金の額」

Aさんは10年近く勤めた会社を先月末に退職し、ついに念願の会社設立へと踏み出しました。

業務内容はHPの作成。

システム作成やウェブデザインからSEOなどのコンサルティングまでをワンストップで提供することがウリです。

そのために優秀なメンバーも揃っています。

給料は高くなりますが、すべてを社内で完結させるためには必要なことと割り切っています。

その分機材等の初期投資を抑え、運転資金もあまりかからないように自宅の一室を事務所として使う予定です。

そして経費節減のため会社設立も自力で頑張ることにしました。

会社名や本店所在地、事業目的等を決めていくと徐々に自分の会社ができる実感が湧いてきます。

さて次は資本金の額。

Aさんはふと考え込みます。

「資本金か~。会社法では1円でも良くなったんだよな~。よし、じゃあドンと1000万にしよう!資本金が1000万と言えば大きな会社のイメージを持ってもらえそうだしな」

意気揚々と資本金を決めたAさん。

しかしこの決定が1年後にAさんを後悔させることになるのです。

時間は流れ1年後、Aさんの会社も無事第1期の決算を迎えました。

第1期は売上高こそ5000万円ほど上がりましたが、予想以上に厳しい業界の状況により少し赤字のフィニッシュです。

しかし、人件費以外は徹底的な経費削減を行ったので、Aさんとしてはそれなりに満足のいく第1期の数字です。

そして何より赤字なので税金はほとんど出ないはず・・・でした。

安易に決めてしまった資本金の額。

その結果、Aさんは支払わなくてよかったはずの消費税を負担することになりました。

消費税は新設法人の場合、2年間の免税が認められています。

ただしこれは資本金が1000万未満の会社の場合(設立1期目の開始の日以後6ヶ月間の課税売上と給与等支払額が両方とも1,000万円を超える場合には、設立1期目のみ免税で、2期目は免税とはなりません)。

Aさんは1000万円にしてしまったため、2年間の消費税、約400万円を損してしまったのです。

それにしてもこの話に出てくる会計事務所は良くない事務所のようですね。

税金の額を決算終了するまで伝えないのは問題です。

概算であっても「いつ、いくらくらいの税金が出るのか」は早めに社長に伝えなければいけません。

【2】失敗しない会社設立のルール2 「事業年度」

Bさんは大手企業に勤めるサラリーマン。

多くの同僚が一生を同じ会社で働くことに疑問を持たない中、Bさんには秘かな野望があります。

それは「自分の会社を作る」こと。

事業内容もネットでの通信販売業をしようと決めています。

独立起業セミナーにも多く参加したBさんは、「通信販売業は取り扱う商品が命だ」と気付き、他社があまり扱っておらず、かつ粗利も高いような"ニッチ商品"を探し続けてきました。

これだという商品に巡りあえてから独立をしようと考えていたB社長ですが、なかなか出会えないまま時間だけが過ぎていってしまいます。

そんなBさんに突然の転機が舞い込んできます。

会社の「早期退職者募集」。

時期は3月末まで。

冬のボーナスをもらい、1月に辞表を提出し、引継をしても3月末には間に合いそうです。

Bさん:「これはきっと神様が後押ししてくれているんだ!このチャンスを逃してしまっては独立の機会はない。よし、勝負だ!!」

事業プランはまだまだこれから固めるところが多くありますが、成功する自信はあります。

そして、Bさんは数年来の夢であった「独立して自分の会社を持つ」という数年来の夢の一歩を踏み出したのです。

辞表提出、引継、送別会、と順調に手続きは進み、予定通り3月には退社する運びになりました。

さて、完全にフリーになったBさんは、念願の会社を作ることから始めることにしました。

会社名、本店所在などの設立要項を順調に決めたBさん。

4月半ばに会社を設立してとりあえず第1期は来年の3月末で終了とすることにしました。

最初の1ヶ月で独立祝いのように知り合いが買ってくれましたので、100万ほど売上が上がったのは予想外の快進撃でした。

しかしこれが後々でBさんを後悔させることになります。

5月になり、6月になりましたが、「これだ!」という商品に出会えずBさんもだんだん焦りが出始めます。

そしていつの間にか暑い夏を迎えたころ、ついにBさんは運命の商品と出会います!

他社があまり取り扱っておらず、ニッチで粗利も高い商品。

まさに理想の商品でした。

読みどおりこの商品は大ヒットを飛ばします。

第1期が終わり、そして第2期を終えようとするころ、この商品のおかげでBさんの会社は完全に軌道に乗っていました。

売上は月500万円を突破。

ホクホクの第2期決算を迎えられそうです。

平成23年の税制改正により、すべての新設会社が2期分の消費税免税が受けられるとは限らないこととなりました。

設立直後の会社の基盤が固まらない間はちょっとでもお金が残るように、第1期開始後6か月間の売上と給与支給額が共に1000万円を超える見込みなら、消費税の免税期間を最長で受けられるように事業年度を組むのが良策です。

具体的には、第1期の事業年度を7か月以下にし、2期目に事業年度を変更して2期目の事業年度を12か月にしておけば、第1期の開始から6か月の売上と給支給額が共に1000万円を超えても、最長20か月の消費税免税を受けることができます。

わかりやすい会社設立レポート 消費税の免税をできるだけ長く受けられるように事業年度を設定せよ!

~用語解説 「事業年度」~

事業年度とは法人にとっての1年間のことで会計年度とほぼ同義です。

いつから始まりいつ終わるかは自由に設定できます。

大企業は4/1~3/31を事業年度にしていることが一般的です。

この事業年度が終わると「決算」を行い、1事業年度の法人税などを納めることになります。

~用語解説 「消費税」~

消費税とはモノが消費されたときやサービスが提供されたときに、消費者が負担する税金です。

納税方法は消費者が直接納めるのではなく、モノを売ったりサービスを提供したりする会社が消費者から預る形を取って消費者に代わって納税します。(間接税と言います)

また会社で仕入れや経費に支払いをすれば、その金額の5%(平成26年4月以降は8%)は相手が納める消費税ですので控除されます。

つまり消費税は売上の5%(平成26年4月以降は8%)を預りもの(仮受消費税)とし、支払った金額の5%(平成26年4月以降は8%)を払った消費税(仮払消費税)として、その差額を納めることになります。

【3】失敗しない会社設立のルール3 「青色申告」

Cさんは名の通ったシステムエンジニア。

自分のスキルの高さを武器にシステム作成の会社を設立しました。

Cさんの技術力は業界でも評判で、大きなシステムの依頼が設立前からガンガン舞い込んで来ます。

とにかく忙しい。

会社設立もネットで見つけた司法書士の先生に頼み、全部マル投げで作りました。

「司法書士の先生は会社設立のプロだ。マル投げでお願いしておいても問題ないだろう」

そう、Cさんはこのように思っていたのです。

そして会社が出来上がったことで安心してその後の税務署や市役所への設立届けを出すのを忘れてしまったのです。

結局Cさんは設立をした後、あまりの忙しさに税理士を探す余裕がなく、税理士と顧問契約ができたのは設立してから4ヶ月が経ったときでした。

設立から1年。

設立前に受注した大型のシステム開発案件は納品まで1年以上を要する大型案件で、まだ引き渡せていません。

売上金の入金もシステムを納品後と決まっていました。

結局Cさんの会社は第1期は売上が全く上がらず、家賃や消耗品費などの経費だけが経常され赤字でフィニッシュです。

赤字額は1000万円の大赤字。

でも第2期はシステムの納品が決まっているので、1000万の黒字になる見込みです。

これらは全部Cさんの想定の範囲内のことなので、1000万という赤字も特に気にしていません。

なにより、Cさんは「繰越欠損金の損金算入」という制度を知っています。

この制度は法人で出た赤字はその次の事業年度から9年間以内の黒字と相殺できるというものです。

つまり、今期の1000万の赤字は、来期の1000万という大きな黒字と相殺になり、結局第2期も税金が発生しないのです。

Cさんはそう思ってい
ましたので赤字も全く痛くなかったのです。

さて、はたして思惑通りにいったのでしょうか?

Cさんはこの言葉を聞いて目の前が真っ暗になっていきました。

しかしこの話は実は良く耳にする話なんです。

たしかに司法書士の先生に任せておけば会社の設立は完璧です。

しかし、設立後のフォローは別問題。

とくに税金面は専門外です。

そこまで司法書士の先生に求めるのは無理な話です。

ですので、設立して一安心していてはいけなかったのです。

この他にも青色申告の届出ができていないと、10万円以上30万円未満の消耗品を買ったときに、1年で全額経費にすることが認められません。

減価償却の特例などの有利な規定を受けることができなくなってしまいます。

そもそも青色申告でない法人は社会的に信用を持ってもらえません。

銀行なども白色申告の法人は相手にしてくれないのです。

青色申告でなくなることは「百害あって一利なし」の最悪の状況なのです。

Cさんはキチンとしていれば納めなくてよかったはずの税金を、来期400万も納めることになりそうです。

わかりやすい会社設立レポート 法人設立したら税務署への届出があることを忘れるな!

~用語解説 「青色申告」~

税金の申告の仕方は「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。

「青色申告」とは、日々の取引を正しく簿記のルールにのっとって会計帳簿をつけ、その根拠となった書類を保存している場合には、優遇措置を認めた有利な申告を認めるという制度です。

主な優遇措置には、

などがあります。

特に①と②は重要です。

ただし青色申告は会社が設立されてから3ヶ月以内に自分で税務署に届出書を提出しなければいけません。

もし届出ができていないと自動的に優遇措置のない白色申告になってしまいます。

ちなみに青と白の由来は、税務署から送られてくる申告書が青色申告だと青色の用紙が、白色申告だと白色の用紙が送られてくることによってます。

~用語解説 「繰越欠損金の損金算入」~

青色申告をしている法人に認められる有利な制度で、法人が損失を出してしまった場合に、その損失を9年間繰り越せる制度。

例えば、第1期に1000万の赤字を出し、第2期が500万の黒字、第3期も500万の黒字とすると、第2期と第3期の500万の利益は第1期の赤字と相殺されて法人税が発生しない。

もし白色申告であれば、第2期と第3期の黒字が相殺されないので、第2期・第3期ともに約200万円の税金が発生し、合計約400万円の法人税が発生することになります。

【4】失敗しない会社設立のルール4 「役員報酬」

Dさんは営業会社でバリバリの営業成績を残してきた優秀な営業マンです。

大学を卒業してから8年、手がけた商品は多種にわたります。

携帯電話、電話回線、コピー機、
これらの商品は利益率が高い分ライバルも多く実力が問われるところです。

そんな中、常に素晴らしい実績を残してきたDさんは、周囲にも一目置かれる存在です。

そして30歳になった今、自分の力を試し、またもっとお金を稼ぐために自分の会社を設立する決意を固めました。

営業会社のサラリーマン時代、Cさんは常に「出来高給」という厳しい環境に身を置き、日々緊張感を持って仕事に取り組んできました。

それはときには苦しくて逃げたいと思うときもありましたが、
今振り返ってみると自分を成長させる良いプレッシャーになったと思っています。

Dさんは独立して社長になったあとも緊張感を失わないために出来高給で役員報酬を取ることにしました。

会社を大きくするために敢えて取ったこの選択。

しかしこれが誤った判断だと気付くことになるのは1年後のことです。

1年後、Dさんの会社は思い描いていた以上に順調に売上を上げていきました。

第1期は売れない月もありましたが、その次の月には鬱憤を晴らすかのような大きな売上を上げました。

それに対応して役員報酬も上下しました。

悪い月では10万円のときもありました。

しかし良い月では300万取った月もあります。

年収でならすと第1期の役員報酬は2000万!

2000万取ったあとの税引き前利益は30万残りました。

この数字はDさん自身も満足のいくものでした。

そして30万の利益なら法人税は20万円くらいになるとDさんは計算しています。

Dさんは決算のことは頭の端に追いやり、第2期の売上アップに意識を集中することにしました。

そして納税の期限がせまり、会計事務所が税額を計算してきました。

Dさんは言葉を失ってしまいました。

出来高給の営業マンだったDさんにとっては給料は変動するのが当然のこと。

定額では甘えが出ると思い導入した役員報酬の変動制ですが、
完全に裏目に出てしまったようです。

法人税法では役員報酬は「定期同額支給」が原則。

つまり「毎月同じ金額を役員報酬として取る」必要があるのです。

もし変動させてしまった場合、その事業年度で一番低い役員報酬が1年間続いたものとされます。

そして実際の役員報酬との差額は「役員賞与」とみなされ、経費として認められません。

非常に危険な失敗ですのでご注意ください!

~用語解説 「役員賞与」~

役員に対する賞与は法人税法では損金になりません。

つまり役員賞与は払わなかったものとして利益を計算し、法人税がかかるのです。

さらに、経費にならないのにも関わらず「源泉所得税」という税金はかかります。

このように設立したすぐの会社では役員に対する賞与は出さないのが基本です。

【5】失敗しない会社設立のルール5 「源泉所得税」

Eさんはゲームのデザインやシステムを作る会社に10年間勤務するサラリーマンです。

納品先のゲームメーカーからも部下からも信頼を集める敏腕プロデューサーで、
社内でも将来を羨望される存在でした。

一見順風満帆なEさんにある日突然降って湧いたような危機が襲い掛かりました。

「情報漏洩疑惑」です。

ライバル会社が発売したゲームが、制作中のゲームと瓜二つなのです。

特に問題となったのが、Eさんしか知らないはずのデザイン。

今回のゲームの目玉となっていたのは斬新なデザインでした。

そのデザインがライバルのゲームで使われていたのです!

その結果、疑惑はEさんに集中することとなったのです。

Eさんは役員会議に呼び出され、集中砲火で攻められました。

身に覚えが全くないEさんは、もちろん猛反論。

しかし、役員の疑惑は深まるばかりです。

Eさんの部下以外の社内全員が疑いの目でEさんを見るなか、
ついにEさんは会社を去る決心をするに至ります。

会社を去る最後の日、失意にうちひしがれたEさんに部下から思いもよらない事実が伝えられます。

こうしてEさんは、状況に追われるようにして会社を設立する運びになりました。

このような経緯で独立したEさんが考える会社のモットーは「社員を大事に」です。

Eさんの部下15人がEさんを頼って新会社に転職してきました。

新会社はEさんの人脈やメンバーのレベルの高さではじめから順調に売上を上げていきます。

その分給料もはずみますが、Eさんにとっては心地よい経費でした。

会社を設立して半年ほど経ったある日、税務署から電話がかかってきます。

従業員の給料は手厚くしていました。

残業代も含めて平均すると一人あたり月給40万。

Eさん自身の役員報酬は月100万です。

その役員報酬や従業員の給料にかかる源泉所得税として
180万円の税金を徴収されました。

さらに不納付の罰金が18万円のおまけ付きです。

資金繰りの予定になかった200万円近い税金は痛い出費です。

源泉所得税の怖いところは、基本的に税務署から申告書などが送られてこないところです。

会社を作った最初に1年分くらいの納付書が入った封筒が送られてきますが、
その後は何も来ません。

毎月自分で計算して納付しなければいけないのです。

知らないまま会社を運営していくと痛い目にあう税金です。

「給料を払ったら翌月10日には源泉所得税」を忘れないようにしてください。

~用語解説 「源泉所得税」~
源泉所得税とは役員報酬や給料にかかる税金のことで、毎月支給時に天引きしておいて翌月10日までに自分で納付書を記載して納めます。

ただし、給与の支給人員が常時9人以下の会社は届出を提出すれば6ヶ月分をまとめて納付する「納期の特例」を選択することもできます。

納期の特例を提出した場合、源泉所得税は毎年1月と7月に半年分をまとめて納付することになります。

【6】失敗しない会社設立のルール6 「経費性」

わかりやすい会社設立レポート「経費性」

「F社長、これは経費にならないですよ!」

会社ができて初めての決算。

F社長は会計事務所との打ち合わせで驚くべき言葉を耳にします。

F社長は人材獲得のコンサルタントとして中小企業に採用の仕方をコンサルタントしています。

会計事務所が経費にならないと言ってきたのは
「スーツ代」「時計代」「かばん代」「くつ代」「クリーニング代」です。

コンサルタントにとってスーツや時計はまさに「販促ツール」。

良いスーツを着ていないとお客の受けも悪いのです。

F社長に悪気は無かったのですが、多くの経費を否認されてしまいました。

法人税だけでなく源泉所得税も出るかもしれません。

なぜなら、会社の通帳やクレジットカードから支払った経費は「賞与」と税務署が判断するかもしれないからです。

1期目は他にも何が経費になって何が経費にならないかがわからないと思います。

ここで挙げたのは「勘違いの多い主な経費」だけです。

実際は他にも経費にならないものは多くあります。

逆に、一見経費らしくなくても経費になるものもあります。

そういった意味では1期目はこまめに会計事務所に相談しておく必要がありますね。

そして正確に決算利益を見据えて、正しい節税をしましょう!

~用語解説 「経費性」~

法人の経費になるものとは、簡単に言えば「売上を上げるために直接必要なもの」です。

この「直接必要か否か」は税務調査で常に論議の的になるのですが、過去の慣習から絶対に経費に入らないものもあります。

ただ、一概に全ての業種で同じ条件というわけではありません。

例えば、「ハワイへの渡航代」は、普通の業種ならばプライベートなものとして否認されますが、「ハワイに支店を持つレストラン経営者」や「ハワイに写真撮影に行くカメラマン」は経費になります。

経費になるかどうかの判断は専門家に確認するのが無難です。

【7】失敗しない会社設立のルール7 「創立費」

「法人の経費にするためには法人名義で領収書を貰わないといけない。」

これは常識ですね。

でも例外があるのをご存知ですか?

それも会社を作る人が必ず一度は使う経費です。

それは「創立費」です。

今回は創立費の取り扱いを知らなかったG社長の話です。

G社長は実直で真面目が取り柄です。

勤めていた会社が倒産したことで、自分でシステム設計の会社を立ち上げました。

しかし、会社が設立するまでの間にもGさんの前職からの取引先は注文を出してくれます。

これもGさんの人柄の賜物なのでしょう。

Gさんも期待にこたえるべく設立前にも関わらず全力で取り掛かります。

必要な設備を一式揃えて。

Gさんのようにスキルがあって、真面目な人柄の社長の会社は伸びるもの。

1期目が終わるころにはGさんの会社は利益が出ました。

どうやらG社長は名義が法人でないため経費に入れられないと思っていたようですね。

システム設計のような業態はいったん動き出せば毎月のコストがほとんど発生しません。

しかし最初には特殊なパソコンやソフトウェアなどに多額のお金がかかります。

それも会社ができる前に発注しないと間に合わないような特殊なものが多くあります。

このような場合、「創立のための経費」つまり「創立費」として法人の経費に入れることが認められています。

他にも登記印紙代や移動の交通費、ハンコ代、打ち合わせ代などは創立費に入れることができます。

ただし、なんでもかんでも創立費にはできません。

なんにせよ一度は会計事務所に確認してみてから領収書ははずすようにしましょう。

【8】失敗しない会社設立のルール8 「生命保険」

会社を設立すると多くの業者さんが営業に来ます。

ダイレクトメールや営業電話もガンガンかかってきます。

どこで情報を掴んだのだろうと思いませんか?

実は会社の謄本は法務局に行くと誰でも見ることができるのです。

生命保険の勧誘員もその一人です。

ピンポ~~ン。

節税?

税金が安くなるのか!

H社長は節税には非常に興味を持っています。

そういえば以前市販の書籍で生命保険が会社の経費になるという内容を読んだ記憶があります。

H社長は「節税」という甘い言葉に心を動かされて生命保険の勧誘員さんを部屋に入れてしまったようです。

こうなると、もう勧誘員の思うツボです。

話だけ聞いておこうと思っていたH社長ですが、
知らず知らずのうちに勧誘員のペースに飲まれていきます。

提案されたのは、最近発売された新商品の生命保険。

支払った全額が経費になる上に、
5年目以降は解約すれば返戻金が払い込み金額の150パーセントになるという商品です。

すごくお得なプランのような気がしてきます。

それどころか、今入らないと大損をするような気になってきました。

保険料は毎月10万円に設定しました。

毎月10万円の保険料は安くない金額ですが、
年間120万円が経費になって、いずれ返って来るのであれば我慢もできるというものです。

H社長、すっかり有頂天ですね。

この生命保険が後日H社長を真っ青にさせます。

時は過ぎて1年後、会計事務所との決算打ち合わせ。

『今後、税務の取扱い等が変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。』

じつは生命保険に関する税制はしょっちゅう改正されます。

いままで経費になっていたものが急に経費にならなくなるということもよくあります。

特に「新商品」と言われる保険については、税制のメスが入っていませんので入る可能性が高いです。

生命保険会社の販売員には悪気はないでしょう。

会社が力をいれて販売するように指示する新商品を、
本当に役立つと思って勧めているのです。

生命保険については事前にかなりの税法の知識は必要になります。

自分で自衛するしかありません。

甘い話には落とし穴があるもの。

お得な生命保険を知ってもすぐに加入せず、
税理士などに相談してから加入するようにしましょう。

~用語解説 「法人契約の生命保険」~法人契約の生命保険は解約をするとお金が戻ってくるタイプのものがあります。このタイプは一部だけ経費に落ちるタイプが主流で、全額落ちるものは今後税制改正が入る可能性があります。

生命保険はしょっちゅう税制改正が入ります。

生命会社が新商品を出すと追いかけっこのように後から改正するからです。

十分に検討してから入ってください。

【9】失敗しない会社設立のルール9 「融資」

さてここまでは「税金」という視点から有利な設立や不利な設立について見てきました。

今回は「融資」という視点から、設立や第1期決算をどのようにすれば有利になるのかについてみていきます。

I社長はインターネット関連の会社で10年勤務した後、自分の会社を持ちました。

事業内容はネイルサロン。

お店はおしゃれな通りに運よく空き物件を見つけました。

設立時の資本金は1円。

会社法改正で資本金1円から設立できるようになっています。

I社長は資本金の大きさに興味がなかったため、
最低の資本金である1円で会社を作ったのです。

そして実際に事業用資金が不足したときは「役員借入金」として、
会社に貸す形を取ってきました。

ネイルサロンは思っていた以上にお金がかかります。

内装、備品、人件費、広告費、家賃・・・。

それに対して売上は競合も多く思った以上に伸びません。

1期目が終わるころになると、社長のお金だけでは足りなくなり、
親戚からも借りる始末。

逆に利益が出ないため役員報酬を取ることもできず、
生活費は会社の口座から借りるような形になっていました。

そして1期が終わると同時にI社長は銀行へ駆け込みました。

I社長は赤字が原因で融資を受けられないと思ったようです。

たしかに赤字は大きなマイナス要因です。

しかし「赤字が出た=融資が不可能」というわけではないのです。

銀行が融資を決定する際に見ているポイントは他にあるのです。

これは銀行ごとにも異なります。

その中でもどこの銀行でもまず見てきているポイントをご紹介しましょう。

その中には「会社設立」のときに知っていれば有利になった点もあります。

例えば資本金。

銀行は融資の際に貸借対照表の「純資産の部」を重視します。

「純資産の部」というのは
「資本金+繰越利益(-繰越損失)+当期利益(-当期損失)」
で算定されます。

この値がマイナスになるといわゆる「債務超過」と言われる状態です。

債務超過になると融資の土俵にはまず上れません。

つまり多少赤字が出ても設立時の「資本金」が大きければ
債務超過にはならなくて済んだということです。

I社長のように資本金にこだわりがないという人が最近多くなっています。

確かに1円でも会社は作れるようになりました。

しかし資本金1円で会社を作ってしまうと銀行融資上は大きなマイナスのハンデを負ったと考えてください。

さらにI社長は生活費のために会社からお金を借りています。

いわゆる「役員貸付金」です。

これも銀行の融資上は大きなマイナスになります。

それであれば生活費分を役員報酬として取って、
赤字のほうがまだマシというものです。

融資に向いた決算書はココでは言い尽くせないほど奥の深い話です。

~用語解説 「社歴の浅い会社の融資」~融資とは銀行などの金融機関からお金を借りることですが、設立して第1期や2期の会社は銀行から直接融資をしてもらえるとは限りません。社歴が浅いうちは「日本政策金融公庫」からの融資や、「信用保証協会」を経由した融資がメインになります。

簡単に言いますと「日本政策金融公庫」は国が全額出資している政府系金融機関で規模の小さい会社に対して融資をしてくれます。

「信用保証協会」とは都道府県や市が運営する協会で、銀行からの融資に対して「公的な保証人」になってくれる組織です。

万一返済が不可能になった場合に債務者に代わって保証協会が銀行に弁済しますので、銀行はリスクが少なく融資を実行できるというメリットがあります。

その代わりに債務者は保証協会に「保証料」を支払わなければいけません。

【10】失敗しない会社設立のルール10  「助成金」

「助成金」

良い響きですね。

簡単に言うと「国がプレゼントしてくれるお金」のことです

しかし助成金を貰うにはいくつかの要件があるのです。

その中には「いつまでに申請するのか」という時間的な要件もあります。

他の要件をクリアしているのに知らなかったため期限までに申請しなかった場合は本当にもったいない。

J社長は残念ながらそのケースにはまってしまいました。

J社長はブランド品のリサイクルショップ経営で独立。

独立の動機は実は前向きな独立ではありませんでした。

前職の大手リサイクルショップが不況のあおりで倒産。

40歳を超えているJ社長は再就職を探しますが、それも難しく、遂に決意した独立です。

しかし前職で長い間店長をしていたJ社長はリサイクルショップ成功の秘訣を熟知しています。

それは店舗の場所と内装と人。

どれだけ人通りが多い場所に出店できるか。

どれだけ明るい雰囲気の店舗内装を作れるか。

J社長は毎日足が棒になるまで歩き続けました。

そしてとうとう人通りが多い駅前の良い空き物件を発見したのです。

内装も勿論手を抜きません。

イメージどおりお洒落なデザイナー風の仕上りです。

結局かかった費用の総額は600万近くになりましたが満足のいく投資です。

店舗の契約もあったため、J社長は早速法人を設立し代表取締役に就任。

新しい人生の船出です。

数ヵ月後、軌道に乗り出したJ社長は従業員も雇いいれて、着実に事業を拡大していきます。

会計事務所が持ってきてくれる決算書を見ると、どうやら黒字でいけているようです。

しかし、手元にお金がない。

ブランド品のリサイクルという商売上、高価なブランド品を現金で買い取らなければいけないのです。

その商品が売れるまでは「お金」は「在庫」という資産に形を変えています。

どんどん買い取らなければ商売はできません。

結果的に利益は出ていても、いつもキャッシュが不足している状態が続きます。

そんなとき、以前の同僚と話す機会がありました。

この同僚も独立してブランド品のリサイクルショップを経営しているので、良い情報交換になると思い楽しみにしていました。

そこでJ社長は驚くべき話を聞くことになるのです。

同僚の人がもらった助成金は「創業補助金」というものです。

この助成金は地域の新たな需要の掘り起しや雇用を支える事業を創業した人などが、国が認定する専門家などの助言機関(認定支援機関たる金融機関等)と一緒に事業計画の策定に取り組み、その事業計画が採択されれば、創業事業費(人件費、創業申請経費など)、販路開拓費(調査費、広報費など)の2/3を200万円まで助成してもらえるものです。

J社長は設立に600万円かかっていましたので、限度額200万円が貰えたかもしれなかったのです。

しかしこの助成金を知らなかったJ社長は、助成金の申請期限が逃してしまったのでした。

助成金はたくさんあります。

いろいろな種類の助成金があり、その各助成金には細かい要件が付いています。

もらえたはずの助成金を取り逃さないよう、設立前に専門家に一度相談しておくと良いでしょう。

~用語解説 「助成金」~

助成金とは簡単に言うと国が支援してくれるお金のことで、返す必要がないもののことです。経済産業省が実施するものと厚生労働省が実施するものがあります。

平成24年12月に発足した安倍政権では、成長戦略の柱の一つとして起業・創業の促進が掲げられており、新規創業に対する助成金が充実しつつあります。

5.会社設立に際して起業家が押さえておくポイント

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【1】会社設立前に、会社がつぶれていく理由を知っておこう
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【2】起業家で成功した人はどうやって自分の「やる気」を維持させてきたのか?

6.【マンガでわかる!】会社設立後に税金で損しないポイント

【1】【マンガでわかる!】システム開発、WEB制作会社は社員の給料が全員経費にならない!
【2】【マンガでわかる!】情報起業、アフィリエイトの収入は入金したときが売上ではない!
【3】【マンガでわかる!】IT系の会社は要注意、消費税の課税方法の選択を間違うと大変!!
【4】【マンガでわかる!】税金は払いたくない!脱税した田中さんに税務署がやってくる!
【5】【マンガでわかる!】過大な節税は禁物! 消費型節税のワナにはまった鈴木さん。

7.公的機関のサービスはここまで使える

【1】東京の会社設立
【2】大阪の会社設立

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