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会社設立後の社会保険加入手続きの流れ・必要書類を詳しく解説
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
▼目次
- 会社設立時の社会保険加入は義務
- 社長1人の会社設立でも社会保険加入は必須!
- 社会保険未加入のままでは「罰則」が適用される可能性あり
- そもそも社会保険とは?
- 健康保険・厚生年金保険の加入手続き方法
- 雇用保険の加入手続き方法
- 労災保険の加入手続き方法
- 社会保険への未加入が判明した場合はすぐに相談しよう!
- 合わせて知っておきたい社会保険の最新事情
- まとめ
会社として一般の従業員と雇用関係を結ぶ時には、その従業員は常に社会保険に加入させなくてはならない義務があります。
未加入のままでは罰則が発生する可能性があり、たとえ社長1人の会社であっても社会保険加入に加入しなければなりません。
ここでは会社設立後に社会保険の加入手続きを行う際の流れについて解説させていただきますので、これから会社設立の準備を行う事業者の方は参考にしてみてくださいね。
会社設立時の社会保険加入は義務
会社設立時は社会保険に加入することが義務付けられています。
社会保険は高齢化や労働災害、介護などによって働けなくなった時に、社会全体でサポートするための仕組みです。
企業に属する社員はもちろんのこと、会社設立を行った社長も加入しなければなりません。
また、パート・アルバイトの社員に対しても社会保険加入義務が発生する場合があります。
平成28年(2016年)9月以前は、正社員との労働時間を比較して、4分の3以上の労働時間が確認される場合のみ加入が義務付けられていましたが、平成28年10月以降は以下のような条件を満たす場合にも、加入義務が生じる可能性があります。
- ・週20時間以上の労働
- ・年収約106万円以上
- ・勤務期間1年以上
- ・学生でない人
パート・アルバイトの社会保険加入条件は、法律が頻繁に改正されることにより年々変化しています。
社員が社会保険加入漏れにならないよう、定期的に税理士(顧問税理士)に相談する必要があるでしょう。
なお、社会保険加入に関する最新事情は後述しているため参考にしてみてください。
社長1人の会社設立でも社会保険加入は必須!
厚生労働省の地方支分部局である地方厚生局によると、社会保険(厚生年金保険・健康保険)は会社(事業所)単位での適用となっており、「すべての法人事務所(被保険者1人以上)」に社会保険加入が義務付けられています。
つまり、社長1人の会社(法人)であっても、「社会保険に加入する必要がある」といえます。
ただし例外もあり、社長が役員報酬を受け取っていない場合、もしくは受け取っている役員報酬額が社会保険料を下回る場合は「加入条件と満たしていない」と判断され、社会保険に加入できない場合があります。
以上のような理由で社会保険に加入できない場合は、個人事業主などと同様に「国民健康保険」「国民年金」に加入しなければなりません。
関連記事:法改正によって拡大した社会保険の加入条件とは?必要書類や手続きについても完全網羅
社会保険未加入のままでは「罰則」が適用される可能性あり
「社会保険未加入」の状態が続くと、最悪の場合「罰則」が適用される可能性があります。
地方厚生局のパンフレットには以下のような文章が記述されています。
Q.社会保険や労働保険の加入手続を怠っているとどのような問題がありますか?
(社会保険)
◇年金事務所から繰り返し加入指導を受けているにもかかわらず、手続を行わない事業主に対しては、必要に応じて立入検査を実施し、職権により遡って加入手続を行い、保険料額を決定します。
このことから、第一段階として「年金事務所からの加入指導」、第二段階として「立入検査および保険料額の決定」と段階的な処理があると分かります。
また、全日本トラック協会の社会保険等未加入に対する罰則強化啓発チラシには、社会保険未加入の事業者に対して、「罰則:6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる」と表記があるなど、社会保険未加入事業者に対する啓発運動が実施されています。
個人事業主から法人成りして会社を立ち上げた場合など、国民健康保険・国民年金から移行せずに放置してしまうケースがあるかと思いますが、社会保険加入は法律で定められた義務ですので、忘れずに手続きを行いましょう。
そもそも社会保険とは?
ここまで社会保険加入の条件・罰則規定などについてお話してきましたが、改めて「そもそも社会保険とは何か?」を確認しておきましょう。
なぜ確認が必要かというと、社会保険の対象範囲は文脈によって「健康保険・厚生年金保険」の2つに限定される場合と、「雇用保険・労災保険」も含まれる場合があるからです。
今回の記事では、「社会保険」を前者の「健康保険・厚生年金保険の2つに限定される場合」として使用しているため、雇用保険・労災保険については別途解説していきます。
健康保険・厚生年金保険の加入手続き方法
健康保険・厚生年金保険の加入手続きは以下の手順で行いましょう。
- 1. 年金事務所に届け出る「必要書類」を準備
- 2. 設立登記完了後5日以内に管轄の年金事務所に提出
まずは年金事務所に届け出る必要書類を準備する必要があります。
それぞれの書類は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
年金事務所に届け出る「必要書類」を準備
社会保険加入手続き時に準備する書類は以下の通りです。
- ・健康保険・厚生年金保険新規適用届
- ・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- ・健康保険被扶養者(異動)届
それぞれの書類は日本年金機構の健康保険・厚生年金保険 適用関係届書・申請書一覧からダウンロード可能です。
健康保険・厚生年金保険新規適用届
事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとした時に必ず必要な書類となります。
事業所の設立登記完了後5日以内に提出しなければならない書類です。
また、以下の場合に応じて添付書類が必要となります。
引用:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするときの詳細説明」
- 1. 法人事務所の場合
法人(商業)登記簿謄本- 2. 事業主が国、地方公共団体又は法人である場合
法人番号指定通知書のコピー- 3. 強制適用となる個人事業所の場合
事業主の世帯全員の住民票(コピー不可)
なお、法人(商業)登記簿謄本、および住民票(コピー不可)は、直近の状態を把握するため、提出日から遡って90日以内に発行されたものである必要があります。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
従業員を採用した場合に提出が必要な書類で、新たに社会保険加入手続きが必要な従業員が出た場合、事実発生から5日以内に提出しなければなりません。
添付書類が必要な場合など、詳しくは以下のページを参考にしてください。
健康保険被扶養者(異動)届
新たに社会保険加入手続きを行った従業員に扶養家族がいる場合に提出する書類です。
また、以下の書類を必ず添付する必要があります。
- ・被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本
- ・住民票の写し(コピー不可・個人番号の記載のないもの)
- ・収入要件確認のための書類
「被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本」と「住民票の写し」はいずれか1つを提出する必要があります。
詳細は以下のページを参考にしてください。
参考:家族を被扶養者にする時、被扶養者の届出事項に変更があった時の詳細説明
設立登記完了後5日以内に管轄の年金事務所に提出
揃えた必要書類は、設立登記完了後5日以内に管轄の年金事務所に提出しましょう。
会社所在地の地域を管轄している年金事務所を検索する場合は、日本年金機構「全国の相談・手続き窓口」からアクセスしてください。
保険料の計算方法
「新規適用届」と「被保険者資格取得届」を提出した後は、従業員や役員のお給料の金額に基づいて保険料を計算し、納めなくてはなりません。
健康保険料と 介護保険料 |
「協会けんぽ」の場合、都道府県ごとに定められた健康保険の料額表に基づく。健保組合の場合は、組合ごとに定められた健康保険と介護保険の料額表に基づく。 |
厚生年金保険料 | 全国一律に定められた厚生年金保険の保険料額表に基づく。厚生年金基金に加入している場合は、基金ごとに厚生年金保険料率や厚生年金基金の掛け金が異なる。 |
保険料の計算は、被保険者資格取得届を提出した時に申告した給与の支払い見込み額を元に、標準報酬月額表に当てはめて「等級」に基づいて行います。
例えば、20万円のお給料を支払う予定の従業員の標準報酬月額は、健康保険については17等級、厚生年金については14等級ということになります(平成29年9月現在、この場合の健康保険料は19820円、厚生年金保険料は23120円です)。
計算した保険料は、半分を会社負担、もう半分を従業員負担として納めます(会社負担分については会社の経費とすることができます)。
年金事務所から毎月20日ごろに納付書が送られてきますから、給与支給月の翌月末までに納めるようにしましょう(従業員負担分についてはお給料から天引きするのが普通です)。
翌年以降は保険料の計算は4月~6月に支給した給与の平均額から標準報酬月額を決定し、1年に1回のペースで月額変更の手続きを行うことになります(その後は金額の変更された納付書が年金事務所から届きます)。
雇用保険の加入手続き方法
雇用保険の加入手続き方法は以下の通りです。
- 1. 必要書類を準備する
- 2. 管轄のハローワークに提出する
雇用保険とは、労働者が何らかの形で失業した場合や、働き続けることが困難になった場合に、給付等が受けられる制度のことです。
事業主は従業員(正社員・パート・アルバイト・派遣等)を1人でも雇用していれば雇用保険に加入する必要があります。
必要書類を準備する
雇用保険の加入手続きに必要な書類は以下の通りです。
- ・雇用保険適用事務所設置届
- ・雇用保険被保険者資格取得届
必要書類はハローワークインターネットサービスの雇用保険・助成金のご案内からダウンロード可能です。
雇用保険適用事務所設置届
会社設立のタイミングで従業員を雇う場合に必要な書類です。
設立登記完了後10日以内に会社所在地の地域を管轄しているハローワークに提出しましょう。
雇用保険被保険者資格取得届
会社設立後に新しく従業員を雇用した場合に提出が必要な書類です。
従業員を雇用した月の翌月10日までに会社所在地の地域を管轄しているハローワークに提出しなければなりません。
管轄のハローワークに提出する
準備した必要書類は会社所在地を管轄しているハローワークに提出する必要があります。
管轄のハローワークを探す場合はハローワークインターネットサービスのハローワーク等所在地情報を活用すると便利です。
労災保険の加入手続き方法
労働保険の加入手続き方法は以下となります。
- 1. 必要書類を準備する
- 2. 都道府県の労働局に提出する
必要書類を準備し、会社所在地の都道府県労働局に提出しますが、書類それぞれで提出期限が異なることに注意しなければなりません。
まずは「保険関係成立届」を提出し、労働保険番号が発行された後に「労働保険概算保険料申告書」を提出しましょう。
全国の都道府県労働局の一覧はこちらから確認してください。
必要書類を準備する
労働保険の加入手続きに必要な書類は以下の2つとなります。
- ・保険関係成立届
- ・労働保険概算保険料申告書
社会保険や雇用保険などと同様に、保険適用を証明するための書類(保険関係成立届)を提出する必要があります。
従業員を雇用した日の翌日から10日以内の提出が定められています。
また、保険関係にあることを証明するために、以下の書類を添付しなければなりません。
引用:都道府県労働局
- 1. 会社の登記謄本原本
- 2. 事業所の実在を確認できる書類(不動産登記記載証明書、公共料金請求書、賃貸契約書)※上記3つの書類で確認が取れない場合は最近事業所に届いた郵便物(消印のあるもの)
- 3. 事業実態を確認できる書類(営業許可証、営業登録証、開業証明書、代理店契約書、など)
- 4. 労働者名簿
- 5. 出勤簿(タイムカード)
- 6. 労働条件通知書(パート・アルバイトのみ)
「保険関係成立届」を提出した後は、労働保険番号が発行されます。
この番号と、算出した従業員の年度の見込給与額を、「労働保険概算保険料申告書」に記述して、都道府県労働局に提出する必要があります。
なお、労働保険概算保険料申告書は「都道府県労働局の窓口」で受け取ることが可能です。
都道府県の労働局に提出する
上述したように、必要書類のうち、「保険関係成立届」は従業員を雇用した日の翌日から10日以内、「労働保険概算保険料申告書」は従業員を雇用した日の翌日から50日以内、となっています。
社会保険への未加入が判明した場合はすぐに相談しよう!
社会保険に未加入のままでいると、加入指導、立入検査といった段階的な措置がとられます。
最悪の場合は罰則が適用されますので、発覚した場合はすぐに専門機関や税理士に相談しましょう。
以下に社会保険・雇用保険・労災保険それぞれの相談先を記載しましたので参考にしてください。
「未加入」と判明した社会保険 | 相談先 |
---|---|
健康保険 | 全国健康保険協会 |
厚生年金保険 | 日本年金機構 |
雇用保険 | ハローワーク |
労災保険 | 都道府県労働局 |
合わせて知っておきたい社会保険の最新事情
また、合わせて知っておきたい社会保険の最新事情として、以下の2つを紹介します。
- ・平成28年10月から厚生年金・健康保険の加入対象者が広がっている
- ・2022年10月から段階的にパート・アルバイトの社会保険加入が義務化される
年々法律が改正されて、今後も社会保険の加入条件が緩和されていくことが予想されます。
平成28年10月から加入対象者が広がり話題になりましたが、2022年10月から段階的に「パート・アルバイトの社会保険加入が義務化される」ことが決まっています。
これから従業員を雇う予定の事業者は、税理士に対応方法を相談しておくと良いでしょう。
平成28年10月から厚生年金・健康保険の加入対象者が広がっている
平成28年10月から週30時間以上働く従業員に加えて、従業員501人以上の会社で週20時間以上働く従業員も、社会保険加入対象者となりました。
平成29年4月からは従業員500人以下の会社でも、事業主と労働者の間で合意が取れれば社会保険に加入できるようになっています。
詳しくは厚生労働省のページをご覧ください。
2022年10月から段階的にパート・アルバイトの社会保険加入が義務化される
2022年10月から、従業員101人~500人の企業で働くパート・アルバイトの方の社会保険加入が義務化されます。
2021年5月末時点では、事業主と労働者の間で合意が取れれば、週20時間以上の労働で社会保険加入が認められていました。
しかし、2022年10月からは義務化されます。
また、2024年10月からは、従業員51人~100人の企業で働くパート・アルバイトの方も社会保険への加入が義務となり、従業員50人以下は事業主と労働者の間の合意が取れる場合のみ任意適用となります。
徐々に社会保険の適用範囲が緩和されていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
まとめ
今回は会社設立時の社会保険加入について、加入条件や手続き時の必要書類、適用範囲の緩和などをお伝えしてきました。
会社設立時は社会保険加入手続き以外にも、様々な手続き・準備が必要となりますので、手続きについて必要な知識を付けた後は、税理士などに依頼するなどして自身の負担を軽くすることも1つの方法です。
後に罰則が課せられないように、社会保険加入手続きは必須の手続きとして認識しておきましょう。
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