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森 健太郎

この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

起業の基礎知識と手順|現状分析・資金調達・開業手続きまで徹底解説【起業の世界Vol.1】

起業の世界Vol.1【最新2019】起業の現状を徹底分析!失敗する人の共通項は?

▼ 目次



これから起業する人は自身の事業を上手く運営していくために、起業に関する様々な知識や方法論を学んでいく必要があります。よく勢い余って起業する人がいますが、多くの場合、「資金繰りに対する認識の甘さ」が原因で失敗してしまいます。逆に、お金に対してシビアな人は、たとえ小規模なビジネスを展開していくとしても長く成功できる起業家になれるといえるでしょう。

今回は起業の基礎知識や手順について知りたい方のために、「税理士へのインタビュー」という形で気になるトピックを取り上げてみました。税理士だからこそ分かる起業のリアルな現実、資金調達の正しい方法など、盛りだくさんの内容となっています。初めて起業に関する情報を収集する方にもおすすめの記事となっていますので、是非最後まで読んでいただければと思います。



0.エピローグ -起業の現状-

起業して3年以内に7割の会社が消えていく…

起業して3年以内に7割の会社が消えていく…

「いつかは起業して一国一城の主に…」

現在はサラリーマンとして会社に所属して働いている方も、いつかは独立起業して経営者となることを夢見ている方も多いかもしれません。

独立起業」というとなんだかハードルが高いことのように感じますが、起業すること自体はそれほど難しいことではありません。

税務署に開業届という書類を1枚出すだけで、その日からあなたは「個人事業主」として独立することもできます。

しかし、重要なのはその後。

独立した後は自力で自分の収入を稼ぎださなくてはならなければなりませんから、事業の将来を見すえ、経営者として有効な手立てをどんどん打って行かなくてはなりません。

「起業して3年以内に7割の会社が消えていく…」とうようなことを耳にしたことありませんか?下の図は中小企業白書で開示されている独立開業後の生存率グラフになります。


参考
(出展:中小企業白書「開業年次別 経過年数生存率」)
(出展:中小企業白書)

起業の失敗の要因の2位は「マーケティングの不十分さ」です。この理由が1位と思ったかたは多いのではないでしょうか?1位は「経営方法についての知識・経験の不足」と経営力の不足が一番の失敗の要因とのことです。

それでは「経営力」とは一体何を指すのでしょうか?

会社経営に必要な全てと捉えれば、誰もが起業はじめは経営者0年目になります。

起業に必要な心構え、熱意、人脈はもちろん成功の必要条件ですが、十分条件ではありません。経営力にはマネジメントをはじめ、会計、税務、法務、労務、融資、助成金といった専門分野についての対応も求められてきます。

起業、そして会社経営をしっかりやっていこうという起業家は専門家をうまく活用をしていたりもします。

現にベンチャーサポート税理士法人で設立当初から顧問契約をしている会社の生存率は、一般の生存率と比較して高く推移していることがわかります。


(ベンチャーサポート税理士法人 2018年調査 2003年~2009年設立のお客様調べ)


起業でうまくいくために経営者にとって必要な条件は多岐にわたりますが、誰もが初めて通る起業の道、また、リソースの少ない起業時であれもこれもと全ての条件を整わせるのは困難ですが、会社にとって必要なこと、経営者にとって必要なことを学んで、バランスよく起業時の経営を行っていくことが求められてきます。


今回は、ベンチャーサポート税理士法人の森税理士に起業を成功させるためのポイントについてインタビュー形式でまとめています。



01.起業数は年々増加、特に外国人の比率が上昇

――――― ここ数年の起業の傾向や特徴について教えてください。

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

弊社での起業相談の状況から見ますと、ここ数年起業の相談件数は増加傾向にあります。

特徴はいろいろとあるんですが、一番の特徴は副業での起業がかなり増えているということかもしれません。

5年前、10年前は、多くの会社の『服務規程』に副業禁止が明記されていて、副業がやりにくいということがありました。

ところが、マイナンバーが始まり、副業が隠せない時代になったところで、どうしたわけか潮目が変わったのを感じるようになりました。

どういうことかというと、「本業に差し障りがないのであれば就業時間外に副業してもいい」という会社がすごく増えたんですね。

会社の規模による違いも見られ、従業員が15人、20人くらいの会社では、頑なに副業禁止をいうような時代ではなくなっている印象です。

そのため、まずは副業でスタートするという人が多いんです。まずやってみて、軌道に乗ってから会社を辞めて起業というケースが多くなっていますね。

業種としては、空いた時間を使えるインターネット物販などが多いんです。副業でやってみたら思いのほかちゃんと稼げるぞというタイミングで、起業という流れになっています。


参考

起業関心層の年齢分布はほぼ均等

起業関心層の年齢分布(2017年調査)
起業関心層の年齢分布( 2017年調査)
出典:『起業と起業意識に関する調査(2017年度)』
日本政策金融公庫総合研究所

起業に踏み切れない理由とは?

『起業と起業意識に関する調査(2017年度)』によれば、起業に関心がある層の約40%が起業に前向きという結果が出ているにも関わらず、実際に起業に踏み切った方はその一部にとどまっています。

その理由でまず1番多かったのは、「自己資金不足」です。約57%の方が起業できない理由にあげており、十分な自己資金の調達ができないために、起業を断念している方が多いことがわかります。

そして、2番目に多い理由は「失敗したときのリスクが大きい」です。約40%の方がこれを理由にあげており、具体的には「借金や個人保証を抱えること」「事業に投下した資金を失うこと」「安定した収入を失うこと」をリスクとしてあげています。

また、「再就職が困難」「再起業が困難」という理由もあげられています。これは、一度会社員から離脱すると再就職が難しく、再び起業に挑戦できるチャンスも少ないという日本の社会構造に起因するといってよいでしょう。

つまり、起業に踏み切れない最大の理由は、経済的、金銭的なものにあるわけです。これは、収入がなければ生きていけませんので、当然といえます。


弊社での起業相談の状況から見ますと、ここ数年起業の相談件数は増加傾向にあります。

特徴はいろいろとあるんですが、一番の特徴は副業での起業がかなり増えているということかもしれません。

5年前、10年前は、多くの会社の『服務規程』に副業禁止が明記されていて、副業がやりにくいということがありました。

ところが、マイナンバーが始まり、副業が隠せない時代になったところで、どうしたわけか潮目が変わったのを感じるようになりました。

どういうことかというと、「本業に差し障りがないのであれば就業時間外に副業してもいい」という会社がすごく増えたんですね。

会社の規模による違いも見られ、従業員が15人、20人くらいの会社では、頑なに副業禁止をいうような時代ではなくなっている印象です。

そのため、まずは副業でスタートするという人が多いんです。まずやってみて、軌道に乗ってから会社を辞めて起業というケースが多くなっていますね。

業種としては、空いた時間を使えるインターネット物販などが多いんです。副業でやってみたら思いのほかちゃんと稼げるぞというタイミングで、起業という流れになっています。


『起業と起業意識に関する調査(2017年度)』を見てみると、起業に関心がある方、過去起業に関心があった方、実際に起業した方を合算すると約26%になります。つまり、約4人に1人が起業に対して、なんらかの興味を持っているわけです。

関連動画

――――― そのほかにも特徴や傾向はありますか?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

ここ5年くらいの傾向を振り返ってみると、資金を日本に投下して、日本の経営ビザも取得して、きちんとしたビジネスを始める外国の方が年々増えている印象です。

特に顕著なのが中国の方で、5年前と今では明らかに増えているというのが大きな傾向ですね。そのほかのアジアの国だとシンガポールの方も目立ちますが、やはり中国の方が一番です。

業種としては、貿易業やシステムエンジニア、民泊業も目立ちます。

こういった感じで、海外の方が本気で日本でビジネスをやるようになったというのが、ここ数年の大きな特徴だと思います。

それだけ、日本でのビジネスに積極的だし、将来性も見込んでいるのではないでしょうか。



――――― シニアの起業も話題になっていますが実情はどうでしょうか?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

世間的には増えているイメージだと思うんですが、現場の実感としてはそれほど多くないんです。

私自身の経験でも、数えるほどしかありません。

シニアの方の起業は、前職の延長線上で起業するパターンと、もともとやりたかった夢を追うパターンに二極化しています。

前者の場合、前職の人脈やノウハウを使うとは思うんですが、法人化はせずに個人事業主でやっていくのがちょうどいい規模にとどまることが多いです。

後者の夢を追うパターンの方は、大変失礼ながら大きなビジネス規模にはならないという方が大半です。自分の趣味を仕事にくっつけたという感じなので、商売は二の次になっているのかもしれませんが、充実感や幸福度は高そうです。


参考

シニア起業の現状

基本データ

起業家に占める割合・・・1.7%
男女比・・・・・・・・・・1:0.22
主要年齢層・・・・・・・・60歳以上
主な業種・・・・・・・・・サービス業/医療・福祉
出典:「2017年新規開業実態調査」

シニア起業の現状  
シニア起業の現状
基本データ

起業家に占める割合・・・1.7%
男女比・・・・・・・・・・1:0.22
主要年齢層・・・・・・・・60歳以上
主な業種・・・・・・・・・サービス業/医療・福祉
出典:「2017年新規開業実態調査」

定年退職後の起業は会社員の起業の2.3%

企業の再雇用よりも起業を選ぶ理由とは

「シニア」には、明確な年齢基準はありませんが、経済産業省では55歳以上の年齢をシニアと定義しています。シニア起業をされる方は、定年退職間近、または早期退職や定年退職をした方が多く、事業内容は「脱サラ起業」と同じように勤めていた会社と同業種で起業する方と、自分の趣味や特技を生かせるような事業で起業する方にわかれます。

現在、定年後の再雇用希望者に対しては、65歳までの雇用延長が義務付けられていますが、その選択をせずに起業する理由はどこにあるのでしょうか?ひとつ考えられる理由としては、再雇用の場合、給与が大幅に下がる、かつて部下だった人が上司になる、やりたい仕事以外をやらされるといったことが多く、そうした待遇に納得できないということがあげられます。それなら再就職という選択も考えられますが、シニアの再就職は、かなり厳しいのが現状です。

そこで、起業という選択をする方が増えているというわけです。ある意味、シニア起業は苦渋の選択の結果ともいえるでしょう。もちろん、もっと前向きな考えで起業する方もいますので、すべてがそういう方というわけではありません。そういった事情が影響するためか、お金よりも自分のやりがいや社会貢献を重視し、事業を拡大することよりも仕事が続けられることを重視する傾向が見られるのも、シニア起業の特徴といえるでしょう。そのため、シニア起業の場合、あまり利益が出ないという話も聞こえてきます。

 

シニアの起業は増加傾向が続く

近年、シニア起業が増えているといわれていますが、どれくらいの方がシニア起業をしているのでしょうか?55歳以上での起業をシニア起業とした場合、55~59歳で起業した方の割合は6.8%、60歳以上で起業した方の割合は6.4%です。合算すると13.2%となり、起業家の約8人に1人がシニア起業となる計算です。これは、割合としてはそれなりに高いといえる数値です。また、起業前に勤務先を離職した理由のうち定年退職は2.3%でした。これらの数値を見る限り、シニア起業は、ある程度根付いてきたといえるでしょう。今後、人口減少と少子高齢化がさらに進むため、シニアは貴重な働き手として重宝される存在になっていきます。また、年金の支給開始年齢が70歳前後まで引き上げられる可能性も取り沙汰されていますので、年金受給までのつなぎのための選択として、シニア起業は今後も増加傾向になっていくのではないでしょうか。


シニア起業のポイント

シニア起業の場合、資金面や人脈・ノウハウでのアドバンテージはあるものの、体力面や健康面では若年層には勝てません。そのため、どの程度の事業規模・収益性で折り合いをつけるかが、ひとつのポイントになるでしょう。

メリット

・やりがいや生きがいを持てる
・長年の経験やノウハウが活かせる
・無理な経営をしないのでリスクが低い

デメリット

・健康面での不安がある
・現役時代とのギャップに苦しむ
・収益性に問題がある


02.全体の約8割を占める3人以下での起業

――――― 起業全般の傾向のようなものはありますか?


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

ここ数年の特徴としては、5年前、10年前と比べると小型化というんでしょうか、人員でも資金でも小さな起業が主流になってきていることだと思います。


開業時の従業者数

開業時の従業者数
出典: 『新規開業白書2018年版』

昔からひとりで起業するという方はもちろんいらしたんですけれども、その比率が明らかに高くなっています。私どものベンチャーサポート税理士法人の大阪オフィスでは、だいたいひとりで起業するというケースが10人中4~5人くらいです。

さらに3人以下という区切りで見てみると、8割前後を占めています。自分と部下2人くらいという感覚だと思うんですけれども、これで8割くらいの方が起業して、そこから1年ぐらいはそのままというイメージです。

5年前、10年前は、会社を起こしたらすぐに社員を雇うとか、パートを雇うとか、ハローワークに求人出すとか、そういったケースが多かったんですが、今はそういうケースはすごく減ったと感じています。

従業員を雇わない理由は、推測になりますが『労働基準法』などが厳しくて、雇いたくない、雇えないということも多いのではないかと思います。

個人的にはもっと積極的に人を雇ってもいいと思うんですが、人を雇うことによっていろいろなリスクを背負うのも大変ですし、まずは手堅くいきたいという起業家が多いようです。これは、皮肉なことに政府方針の真逆になってしまっていますね。



――――― 起業資金や会社設立時の資本金はどうでしょうか?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

資本金に関しても、やはり小型化といいますか、金額は減少傾向ですね。具体的には、資本金100万円以下での起業がすごく増えているなという印象です。

これは、制度が変わって少額でも起業できるようになったという理由もありますし、自分の用意できる範囲で起業する慎重な方が増えているということだと思います。

一方、実際に起業した方に目を向けてみると、「ひとり」「小額」での起業が増加しているという結果になっています。具体的な費用を見ると、100万円以下での起業が全体の約半数を占め、その自己資金比率は約91%です。つまり、実際に起業するには最初から何百万円も用意する必要はなく、わずかな自己資金でも問題なく始められるのです。


参考

100万円未満での起業が約半数

起業費用(2017年調査)

起業費用
出典:『起業と起業意識に関する調査(2017年度)』
日本政策金融公庫総合研究所

また、会社に勤めながら副業・兼業で起業するという方法もありますので、前述したような起業を考えている方が不安に思っている点のほとんどは、実は杞憂に過ぎないのです。今、本誌を手に取られている方のほとんどが、起業に興味がある方かと思います。本誌は、過去13000社の起業をサポートしてきた「ベンチャーサポート税理士法人」の全面協力のもと、起業に関するさまざまなデータから心構え、実際の手続きまでを網羅しています。起業に関するさまざまな不安や疑問を解消できる内容になっていますので、起業を考えるみなさんの参考にしていただければ幸いです。“案ずるより生むが易し”。起業してみたいという方は、まずは、低リスクな起業で最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

――――― 起業後の経営状況はどうでしょう?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

昔と比べて、会社が軌道に乗る割合が増えたという感覚が現場にはあります。

10年前は、「一期目は赤字でも仕方ない」といった方がほとんどだったんですけど、今は一期目からちゃんと利益が出る、軌道に乗りやすいというんでしょうかね、それがここ数年の特徴です。

ざっくりとした話で恐縮ですが、当社が起業をお手伝いした方の場合、一期目で7割近くが黒字かトントンといった状況になっています。反対に2~3割がちょっと厳しい……廃業まではいかないんですが、うまくいっていないという感じです。


参考
業績・労働環境の変化や課題

起業後の状況

無事に起業できたとしても、起業はあくまでも手段であり、目的ではありません。起業後、いかに経営を軌道に乗せるかは大きな課題です。業況はもちろん、労働環境の変化を知り、来たるべき課題の対策を練っておきましょう。


調査時点の月商(1ヵ月あたりの売上高)

調査時点の月商(1ヵ月あたりの売上高)
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点

6割近くの企業が増加傾向に

調査時点の売上状況(2017年度)

調査時点の売上状況(2017年度)
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点
※値は小数第2位を四捨五入しているため、合計100%にならない

黒字基調になるまでにかかった期間は平均6.6ヵ月

調査時点の採算状況(2017年度)

調査時点の採算状況(2017年度)
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点

小規模経営の増加で低月商の企業も増加

調査時点(開業時から平均14.6カ月後。以下同様)の月商の分布は、100万~500万円未満が43.9%と最も多く、100万円未満が40.9%で続いています。100万円未満の割合は2015年が35.3%、2016年が39.3%で、2年連続で増えており、月商が低い企業の割合が増加傾向にあることがうかがえます。

ただし、調査時点の売上状況は増加傾向が59.4%で、調査時点の採算状況は黒字基調が61.8%です。

このことから月商100万円未満の企業が増えたのは、経営状況が悪いのではなく、経営規模の小さい企業が増えたことが一因とも考えられます。


03.想像以上に少ない学生と主婦の起業

――――― 近年、学生の起業が増えているという話が聞きますが、実際はどうでしょうか?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

これは世間のイメージと違うと思うんですけれども、実は学生の起業ってあまり多くないんですね。

世間では学生起業が盛んなような言われ方をしていますが、私どもの感覚でいえば全体から見て少ない割合となっています。

もちろん、これまで当社が起業をお手伝いした学生の方も何人かいらっしゃいます。学生起業の場合、よく似たビジネスで起業されるという特徴があるように思います。

学生の起業家は、自分たちの一番の武器が「学生とのつながり」ということをわかっています。そこで「学生の人脈を使って学生を集める」というビジネスで起業する方が多いようです。

学生同士の横のつながりやサークルの仲間、イベントなどで学生を集めて、それを企業の要望にマッチングさせて紹介し、紹介料をもらうという形です。


参考

学生起業の現状

基本データ

起業家に占める割合・・・0.04%
男女比・・・・・・・・・・1:0.22
主要年齢層・・・・・・・・29歳以下
主な業種・・・・・・・・・製造業/医療福祉
出典:「2017年新規開業実態調査」

学生起業の現状  
学生起業の現状
基本データ

起業家に占める割合・・・0.04%
男女比・・・・・・・・・・1:0.22
主要年齢層・・・・・・・・29歳以下
主な業種・・・・・・・・・製造業/医療福祉
出典:「2017年新規開業実態調査」

日本ではまだまだ少ない学生の起業

若さゆえの特権を最大限に活かせる

「学生起業」とは、読んで字のごとく在学中にビジネスを始めることです。ほとんどの場合、大学生の起業を指すことが多いのですが、中学校や高校在学中に起業する方がまったくいないということではありません。 大学生の一番の強みは、なんといっても自由な時間があることでしょう。起業準備に使う時間を取れるので、しっかりとした準備ができます。 また、体力がありますので、起業準備や起業後の踏ん張りどころで無理が効くことも、強みとなるでしょう。

事業内容では、既存の枠や社会の常識にとらわれない学生ならでは柔軟な発想が武器になります。 そのため、革新的なサービスや製品が、学生の起業家によって生み出されることは、珍しい話ではありません。 たとえば、フェイスブックを創業したマーク・ザッカーバーグ氏は、学生時代に原型となるサービスを開発して起業し、大きな成功を収めています。

また、もし起業に失敗してしまっても、その失敗を取り返すだけの十分な時間が残されていることも大きなメリットといえるでしょう。 一方、資金力の乏しさは、大きなデメリットといえます。 起業当初はなにかとお金が必要になりますので、資金不足で精神的に追い込まれてしまうと、せっかくのいいアイデアも活かせないでしょう。 ただし、近年は学生の起業を大学が支援する制度や学生起業を支援するファンドなどもあり、そうした制度を利用することで、資金不足のデメリットは解消できます。


学生起業の実態はかなり厳しい…

先ほど紹介したマーク・ザッカーバーグ氏のほか、ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏やマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏といった名だたる経営者も、学生時代に起業しています。そんな経営者たちに憧れて、起業する学生が増えている――といったイメージを持っている方が多いのではないでしょうか? ところが実情は違います。 学生起業は、法人を設立した起業家全体に占める割合はわずか0.04%となっており、起業家2500人に1人しかいません。

つまり、日本では想像以上に学生の起業は少ないのです。 これは、日本社会の価値観として、優秀な学生ほど大企業や公務員といった、安定したところを選びやすいということが理由のひとつでしょう。 また、学生起業の廃業率は一般よりも高いというデータもあり、成功するのは本当に一部というのが現実です。 学生起業の最大の武器は柔軟な発想ですが、独りよがりなものであったり、現実離れしたものは、失敗する原因になりやすいといえるでしょう。


学生起業のポイント

学生起業の最大のポイントは、斬新かつ実用的なサービスや製品などのアイデアです。 こうしたものを生み出せれば成功する可能性は高まりますが、ありきたりなものであれば、厳しい結果が待っているでしょう。

メリット

・自由に使える時間が多く挑戦しやすい
・型にはまらない発想や視点を売りにできる
・起業に失敗しても経験として活かせる

デメリット

・学業との両立が難しく留年のリスクがある
・学生であることに甘えがちになる
・資金力に乏しい


――――― 主婦の起業も増えているイメージがありますが、実際はどうでしょうか?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

まず、女性全体で見ると増加傾向ですね。当社のお客さまの場合ですと、どんな業種かに関わらず、正社員で働いていた女性の方が独立するケースが増えています。

たとえば、システムエンジニアをやっていた方が独立するとか、化粧品の販売員が化粧品のショップを開くといったように、前の仕事の延長で起業する形です。

自分の経験を生かしたり、前職で作った人脈が応援してくれたりと、割と成功確率の高いビジネスでスタートするというのが、女性の起業の特徴といえると思います。

そのほか、人材派遣や人材紹介での起業も多い印象ですね。

一方で主婦の起業はむしろ減っています。これも世間のイメージとは違うと思うんですが、今はやや下火になったと感じています。

というのも、ここ5年くらいの傾向ですが、多くの企業が主婦のパートにかなり高い時給を支払ったり、時間の融通が効く働き方を提示したりとか、そういった高待遇で雇う状況になってきているんですね。

そのため、主に家計を助けるという理由で働きたい主婦の方は、パートで十分なわけです。それでも、数年前まではネットビジネスを中心にそれなりの件数があったんですけれども、ここ1~2年の傾向として、リスクを負ってまで起業するというのは減少傾向となっています。

もちろん、ゼロではないんですけど、当社に相談に来られる主婦の方というのは、けっこうレアなケースになっていますね。

主婦の起業の傾向ですが、「地域に根ざした系」といえばいいんでしょうか、近所の主婦や仲間が集まるようなカフェなどの飲食店、雑貨店や洋服店などの小売店といった、地域に根ざしたかたちでの起業が目立ちます。


参考

専業主婦・主夫起業の現状

基本データ

起業家に占める割合・・・1.1%
男女比・・・・・・・・・・1:13
主要年齢層・・・・・・・・40~49歳
主な業種・・・・・・・・・サービス業・小売業
出典:「2017年新規開業実態調査」

専業主婦・主夫起業の現状  
専業主婦・主夫起業の現状
基本データ

起業家に占める割合・・・1.1%
男女比・・・・・・・・・・1:13
主要年齢層・・・・・・・・40~49歳
主な業種・・・・・・・・・サービス業・小売業
出典:「2017年新規開業実態調査」

子育てが落ち着いた40代の起業が目立つ

復職を選択せずに起業するケースが増加

「専業主婦・主夫」の起業とは、家事や育児に専念していた主婦・主夫が、新たに事業を始めることです。 起業する理由はいくつかありますが、結婚や出産、子育て、配偶者の転勤などで退職した方が、生活が落ち着いたタイミングで再び働こうとする際、起業を選択するケースが多くなっています。 というのは、特に専業主婦の場合ですが、復職しようとして応募しても採用してくれる企業が非常に少ないという残念な現実があるからです。 そのほか、家計を支えるという金銭的な理由で起業するケース、社会貢献や自己実現のために起業するケースも多く見られます。 ただし、このふたつの理由は、起業理由としては一般的なものですので、専業主婦・主夫だけの特徴とはいえないでしょう。

また、近年、カリスマ主婦がテレビや雑誌で紹介されひとつのブランドになっているなど、起業して活躍する女性が増えていることも、専業主婦が起業を選択する理由のひとつになっていると推測できるでしょう。


仕事と家庭を両立できる在宅ビジネスがメイン

専業主婦・主夫から起業した方は、全体の約1.1%、起業家の90人に1人という割合となっています。 最近は主婦の起業が話題になることが多いため、意外な数値ではないでしょうか? 理由のひとつとして、巻頭インタビューで森税理士が指摘していたように、主婦のパートの待遇が高水準になっていることがあげられます。

ご存知のように、様々な業種で人材不足となっているため、パートやアルバイトの時給は上昇しており、待遇もかなりよくなっています。 そのため、経済的な理由で働きたいと考えていた方は、わざわざリスクを負って起業しなくなっているのが、減少の原因でしょう。 そのなかで、あえて起業を選択する理由は、無理なく仕事と家庭を両立して働けることが大きな魅力となっているようです。 業種としては、「サービス業」「小売業」で起業する方が多く、ネット通販のようなパソコンを活用して在宅でできるビジネスと、自宅の一部を使って開業できる小売店や小さな飲食店、さまざまな教室といった在宅ビジネスの占める割合が多くなっていることが見て取れます。

特に子育て中で、小さなお子様がいる場合は、自宅で子育てと両立できるというのは、パートにはない大きな魅力となっているようです。 また、特に専業主婦の場合ですが、自己実現や社会やコミュニティへの貢献、特技や趣味を活用した起業が多いことも、もうひとつの特徴といえるでしょう。


専業主婦・主夫起業のポイント

専業主婦・主夫の起業の場合、もともと主夫の数が少ないため、圧倒的に女性比率が高くなります。 そのため、事業内容も女性の視点を活かしたものや女性ならではのものが必然的に多くなっています。

メリット

・家事や子育てのすき間時間を有効活用できる
・社会との関わりが復活する
・趣味や特技など好きなことを仕事にできる

デメリット

・仕事だけに専念できない
・できる事業が限られてしまう
・扶養家族から外れる可能性がある

主婦仲間に「◯◯さんセンスいいからやってみたら?」といわれて起業を思い立ったケースや、主婦のコミュニティの延長のような感じで、料理教室や語学教室、フラワーコーディネイト教室みたいな、自分の特技や資格を活かした教室系のものも増えていますね。



04.サラリーマンに多い経験を活かした起業

――――― 会社を辞めて起業する方に特徴はありますか?


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

会社を辞めて起業というのは、今も昔も王道のスタイルですが、近年の特徴として、「競業避止」で揉めるケースが増えています。

どういうことかというと、今まで会社で培ってきたノウハウや人脈があるなかで、同業種で独立起業されると、前の会社とは競業することになってしまうんです。

そのため「会社のノウハウを使うな」とか、「得意先を持っていくな」といったようなトラブルがかなり増えてきています。

当社に弁護士法人ができた関係で、そういった相談が入りやすくなったという部分もあるとは思うんですけれども、前職と折り合いがつかない脱サラというのが、ここ数年は明らかに目につく様になってきました。


参考

脱サラ起業の現状

基本データ

起業家に占める割合・・・87.2%
男女比・・・・・・・・・・1:0.2
主要年齢層・・・・・・・・30~49歳
主な業種・・・・・・・・・サービス業/医療・福祉
出典:「2017年新規開業実態調査」

脱サラ起業の現状  
脱サラ起業の現状
基本データ

起業家に占める割合・・・87.2%
男女比・・・・・・・・・・1:0.2
主要年齢層・・・・・・・・30~49歳
主な業種・・・・・・・・・サービス業/医療・福祉
出典:「2017年新規開業実態調査」

圧倒的多数を占める会社員からの独立

前職を活かした起業が脱サラ起業のメイン

「脱サラ」での起業、つまり会社などを退職しての起業は、今も昔も王道中の王道といえるでしょう。

実際、脱サラ起業が占める割合は87.2%という圧倒的多数となっています。 脱サラ起業のメリットは、前職のノウハウや人脈、経験を活かした事業を起こせることです。そのため、比較的成功する確率の高い起業方法といってよいでしょう。 開業時の「事業内容の決定理由」に対する回答でもっとも多いのが、「これまでの仕事の経験や技能を生かせるから」(男性44.6% 女性39.5%)となっており、次が「身につけた資格や知識を生かせるから」(男性22.2% 女性18.8%)となっています。 反対に「新しい事業のアイデアやヒントを見つけたから」と答えたのは男性4.5%、女性5.5%ですから、前職を活かした事業で起業している方がかなり多いことがわかります。

同時に、これが脱サラ起業のデメリットにもなっています。前職との競合で折り合いがつかず、トラブルになるケースが増えているのです。 顧客リストの持ち出しといった明らかな不正がなければ、起業した側が負けることはほとんどないそうですが、起業後の忙しい時期にトラブルに巻き込まれるのは、避けたいところでしょう。 また、会社からの給与がなくなり、安定した収入の道が絶たれることもデメリットとなります。事業が早々に軌道に乗れば問題ありませんが、そうでない場合、資金繰りが悪化して生活にも影響を及ぼすことになりかねません。

 

もっとも多いのは管理職からの起業

もう少し、脱サラで起業する方の具体像を探ってみます。 まず、もっとも多い年齢層は30~39歳、次いで40~49歳、50~59歳となっています。 前職を活かした起業が多いので、会社である程度のキャリアを積んだ方が多くなるのは必然といえます。 さらに、前職の内訳を細かく見てみると、「正社員・職員(管理職)」からの起業が40.8%ともっとも多いことがわかります。

つまり、会社で管理職だった方が退職し、同業種で起業するというのが脱サラで起業する方の典型になっていることが見えてきます。 ただし、管理職以外の正社員・職員の起業も31.9%あり、その年齢分布は29歳以下がもっとも高くなっていますので、20代での脱サラ起業も珍しくないことがわかります。 脱サラ起業は、今後も起業の主流であり続けるのは間違いありませんが、時代の変化にともない、年齢分布などは徐々に変化していくかもしれません。


脱サラ起業のポイント

脱サラで起業する場合、人脈や経験を活かせるメリットがある半面、同業種で起業する場合は、前職との競合に注意が必要です。 また、働く時間も働き方も自分で自由に決めることができますが、収入は安定しません。

メリット

・前職のノウハウや経験を活かせる
・同じ仕事でも自分の考え方とやり方でできる
・リストラや定年がない

デメリット

・収入の保証がなくリスクが大きい
・有給休暇がなく福利厚生もない
・前職とトラブルになる可能性がある


――――― もし前職との折り合いが付かない場合は?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

折り合いがつかない場合は、両者が弁護士を立てての裁判になりますが、現在の日本の法律では「職業選択の自由」という権利が非常 に強いので、起業した側が最終的には勝つケースが多いんです。

もちろん、顧客リストを持っていったとか、在職中に自分の仕事のための種を蒔いていたとか、そういう明らかな問題行為がないという前提ですが。仮に、辞めるときに覚書とか契約書みたいなのを交わしたとしても、会社側が勝てる見込みは少ないんです。

そこで、裁判沙汰になる前に、落とし所を見つけるケースが増えています。金銭で保障するのか、ここまでの仕事は譲るけど、これ以上の仕事は持っていくなという紳士協定を結ぶのか、もっときちんとした契約を結ぶのかはケース・バイ・ケースですけど、起業させない、営業させないといったことはできません。


参考

弁護士が語る起業のリスク

弁護士 福西信文

弁護士
福西信文

起業家にとって、弁護士というと、縁遠い存在に聞こえるかもしれません。起業の段階では、設立登記なら司法書士、許認可なら行政書士、税務・会計であれば税理士、はじめから人を雇うなら社労士、といったように、各手続で決まった専門家がいる一方で、弁護士には、必ずしも起業にあたって関わらなければならない手続がないからです。しかし、中小企業は、法的リスクに常にさらされている存在です。中小企業が抱える法的リスクには、大きく分けて3つのリスクがあります。

1.株式に関するリスク

友人や元同僚など、複数人で起業したり、第三者から出資を受けて起業するというケースでは、会社の持分が問題になることがあります。起業後に、方針の違いによって仲間割れが起きることは少なくありません。こういったトラブルを防ぐためには、あらかじめ、退任する株主役員の株式は、会社が強制的に買い取る等の種類株式を導入したり、株主間契約を締結したりしておくことが必要となります。

2.商取引に関するリスク

たとえば、商社ビジネスであれば、仕入業者から商品を仕入れて、在庫を持ち、集客して販売し、売上金を回収する、といった流れになりますが、商品の仕入れや販売には、商取引トラブルが発生するリスクがあります。このとき、きちんとした契約書がなければ、問題解決のコストは大きなものになりかねません。事前に弁護士に相談して、契約書や約款等、自社の商取引に必要な各書類を整備しておくことが重要です。
また、売上金の入金がなく、債権回収を行わなければならないというリスクもあります。自分で回収することが難しければ、債権回収を弁護士に依頼することになります。

3.雇用・競業リスク

人を雇用すると、労働者に対する各種責任が発生します。しかし、中小企業の場合、そのために十分な人員もコスト負担もできないことが多く、人の入退社に当たって、しばしば、不当解雇や未払残業代等のトラブルが発生することがあります。法的紛争になってしまった労働問題は、弁護士に依頼して対応する必要があります。
また、前職の会社から人を雇ったり、前職の顧客に営業をかけたりして、前職の会社とトラブルになるという方も多いです。近年は、秘密保持や競業防止の観点から、退職時に競業禁止の合意書を提出させてから退職させる企業が増えています。こういった書類を作成したのに、同業の会社に転職したり、同業で起業したりして、競業禁止違反で訴えられるという事例もあります。
このようなトラブルを防ぐためには、退職の前から弁護士に相談し、リスク回避に努める必要があります。

このように、中小企業には起業段階から様々な法的リスクがあります。これらに対処するためには、起業段階から自社のビジネスモデルを理解し、適切なアドバイスをしてくれる弁護士が必要です。起業家の方は、早い段階で、相談しやすい弁護士や顧問弁護士を探しておくことをお薦めします。


05.失敗する人の共通項は資金繰りに対する甘さ

――――― 起業を成功させるためのポイントを教えてください


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

一言でいえば、起業時はすべてのエネルギーを会社経営に注がないとダメということに尽きると思います。一生に一度の頑張る時期だという気持ちでやるのが最重要なんです。

もっと具体的にいうと、とにかく売り上げをあげることに全エネルギーを注ぐということです。

ところが、会社を辞めて自由になったのでちょっとのんびりしてしまうという方が意外と多いんです。

勤務時間に縛られるわけでもなく、誰かに見られているわけでもないので、なんだかのんびりしているなという方がいらっしゃるんですが、そういった方が成功することはまずありません。自分の持っている全エネルギーを売り上げをあげることに注ぐとか、とにかく最初のひとつ目の商談を成功させるとか、新たな得意先を開拓するとか、広告を試すととか、できることをすべてやる方と、得意先もあるし案件もあるからと安心してのんびりしてしまう方とでは、確実に成功の確率が変わってしまいますね。



――――― 資金繰りの部分はどうでしょうか?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

資金の話ですと、だいたい3カ月から半年分の資金を用意してスタートされる方がほとんどです。当然その資金が持つ間が勝負なので、その時期に頑張れない方は失敗します。

どんな人でも、資金が減りだすと焦ってしまい、まっとうな思考ができなくなるので、収益性の低いビジネスに手を出したり、借り入れをして返済のことばかり考えたりといった悪循環に陥ってしまいます。

私からすると、お金が回らないということに対する認識が、甘い方が多いように思います。「お金がどこまで続くのか」ということがリアルに見えている方が少ないんです。

たとえば、起業時に事務所の内装やエントランスを豪華にするといったことをしてしまいがちなんですが、「お金がなくなったらビジネスは終わり」という発想が抜けてしまっているといわざるを得ません。

最初の頑張る時期は、売り上げをあげることにお金とエネルギーと思考を全部注ぐべきなのに、ちょっと違うな……という方が多いんです。

資金と資本金の違いとは?使い道は?

よく混同される言葉に「資金」と「資本金」があります。資金とは、自己資金のことを指していますが、これは「預金通帳で確認できる、継続的に貯蓄した記録が分かる現金」となります。つまり、起業時に自己の財産から用意した資金、ということになります。

一方の資本金は、株式発行で株主から得た資金が該当するなど、自身以外が出所の出資金に対して使われる言葉です。資本金は登記事項に記載する会社設立時の元手として一般に認識されるため、ある程度の額を設定しておくことがポイントとなります。

先ほどの例でいうと、会社設立時の費用と売上が立つまでの3ヶ月間の運転資金として「300万円」が相場といえるでしょう。なお、資本金で設定した金額は「会社のお金」となりますので、一度資本金として設定したらプライベートのお金として引き出すことはできません。仮にプライベートのお金として引き出す場合は「社長・役員への貸付金」として計上する必要があります。

借入金は資本金にできない

またもう1つ注意しておきたいのが、「借入金は資本金として設定できない」ということです。先ほどの見出しでは株式発行によって得た出資金や、外部から調達した資金などが資本金に該当すると説明しましたが、補足すると、「返済義務のあるお金」は資本金として計上できないことになっているんです。

銀行からの融資も「借入金」に該当しますので、資本金にできないことを覚えておきましょう。資本金について理解を深めたい方はこちらのページを参考にしてみてください。




06.お金に対するシビアさは成功の必須条件のひとつ

――――― シビアになれない方が多いということでしょうか?


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

そうですね。たとえば、売掛金の回収が甘いという方は珍しくありません。売掛金の入金に対して確認漏れがあるとか、お金に対してシビアじゃないんです。

サラリーマンなら未回収でも自分の給料が減るわけではありませんから、シビアに回収しなくても良かったかもしれませんが、起業したらお金が尽きるまでの半年間が勝負ですから、もっとシビアにならないとダメですね。

さらにいうと、成功する方は“シビアの基準が全然違う”というイメージがあります。

たとえば、今は年商50億超える会社の社長さんのケースですと、起業時は足が壊れた中古の机を買ってきて、雑誌を積み重ねて足にして使うくらいお金にシビアな方でした。

これは極端な例かもしれませんが、成功する方というのは、これくらいお金にシビアだということは理解していただきたいところです。

売掛金とは?

先ほど「売掛金」という言葉を使いましたが、売掛金とは「未回収のサービス代金」のことを指します。多くのサービスは販売された後、現金化されるまでに一定期間のタイムラグが発生します。通常このタイムラグは「代金が支払われるまでの期間」として考えることができますが、同時に「現金化できない可能性がある」ということを示唆するものでもあるのです。

つまり、サービスを販売しても現金化できなかった場合、月々の支払いに充てる現金が手元に残らないことになります。そうすると銀行から借入を行ったり、知り合いや家族から借入を行うことになりますが、そのまま代金が未回収のまま終わってしまうことも少なくないのです。

売掛金の回収が遅れるとどうなる?

売掛金の回収が遅れたり、未回収のまま終わってしまったりすると、自社はサービスを提供したにもかかわらず、それに見合うだけの報酬や代金が得られないことになります。しばらくそうした状況が続くと、手元に残っている現金は減っていきますので、自然と事業が続けられない状態へと追い込まれていきます。売掛金の回収に対する認識の甘さが、こうした事態を生んでしまうのです。




07.準備を整えるよりも先に行動する人が成功する!

――――― 起業準備はどれくらいするのがよいでしょうか?


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

すべての用意が完全に整ってから起業する人なんて、ほとんどいないですね。

ここを勘違いされている方が、いらっしゃって、準備万端整えて起業しようとするんです。

実際のところ、「お金も用意できた」「得意先もある」「家族も応援してくれる」、それが全部揃って起業するなんてケースは稀でほとんどのケースでは全部が揃うわけではないんです。

そうではなくて、チャンスが来たとか、いい話が入ってきたとか、ある市場が活性化しているとか、会社を辞めるタイミングとしてベストだなど、用意が整ってからではなくて、チャンスと思ったときに動けるかどうかということが、成功するかどうかの部分で大きなウエイトを占めると思っています。

当社のお客さまでも、用意は整っていないけど、まずは起業して後は走りながら考えるという感じの方が多いですね。

とりあえず起業してみて、半年間は必死に売り上げを上げるためにやってみた。そうすると、軌道に乗り始めたところで、足りなかった部分も見えてくるものです。

起業というのは、最初からすべて計算ずくでできるようなものではないので、いろんなことを走りながら考えられないとダメだというのは、これから起業を考えている人に、一番知っておいてもらいたいことですね。

頑張れるエネルギーと絶対に成功するまでやり遂げる覚悟ができたのなら、後は走りながら準備していけばいいんじゃないかなと思います。



――――― 起業の準備は完璧ではなくてもいいということですね?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

これは言いにくいことなんですけど、準備万端整える方って、なかなか成功しにくいんです。

たとえば、会社の経理を勉強してから起業するとか、簿記を理解してから起業するとか、設備一式を揃えてから起業するとか、そういう方は、なかなか成功しにくいのが現実ですね。

むしろ、準備なんかしないで、ここにお金の臭いがするとか、これがブームになっているとか、このテーマで講演する人が増えたとか、そういうチャンスを逃さない嗅覚というんでしょうか、とにかくチャンスに飛びつく方のほうが 成功する確率が高いんです。

それでうまくいってから、経理は税理士にまかせようとか、仕事する環境を整えようとか、考えるわけです。

もちろん例外はありますが、基本的には、いろんなものはあとで走りながら考えていく人が、大きな成功に結びついている可能性が高いと思います。




08.起業前に自問自答することが大事

――――― これから起業を予定している人に起業前にやっておくべきことを教えてください。


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

起業の手続き自体はそれほど難しいことではありません。

ですがその前に、「本当に自分は起業したほうが良いのか?自分が本当に求めている働き方は独立なのか?」ということについて深く考えておく必要があります。

というのも、独立した後にはあなたに対して命令をする人はいなくなるからです。

いっけん自由で楽しいようですが、仕事へのモチベーションが収入に直結することになりますから、これはとても厳しいことでもあります。

起業後になって「こんなはずじゃなかった…」なんてことにはならないよう、起業前の段階で深く考えておくべきです。

起業後には経営者である自身の事業への意気込みが、事業の将来そのものを決定づけることになります。

事業に対してどのぐらい思い入れがあるのか?

あるいは自身が「独立起業して生きる」というライフスタイルにどれぐらい魅力を感じているのか?

ということを確認しておかなくてはなりません。

つまり、起業前に必ず自問自答をしていただきたいです。



――――― 他に起業前に考えておくべきことはありますか?

ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

実際に事業をスタートさせる前にやるべきこととして、重要なことは事業内容を決めることです。

つまり、「何をメシのタネにするか?」ということです。

ビジネスモデルをしっかり構築しておかなければ起業してもうまくいきません。




09.事業内容とは何をメシのタネにするか?

――――― 事業内容とは簡単にいえば「何をメシのタネにするか?」ということですが、外部からお金をもらえるレベルのサービスを継続的に提供するために必要な視点を教えてください。


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

社会に求められているものを探す

意外におちいりがちな間違いが「自分はこの仕事が得意だから、この仕事を事業にしよう」という考え方です。

あなたがどれほど得意な仕事であったとしても、その仕事が社会から必要とされていないものであれば1円もお金を受け取ることはできません。

目安としては、「いま現在、お金を払ってもらえている仕事」をきっかけにしてみるとよいでしょう。

現在サラリーマンの方なのであれば、「自分の仕事のどの部分が直接的に所属企業の利益に貢献しているのか?」について考えてみましょう。

あなたがお金を受け取るということは、当たり前ですがあなたに対してお金を払っている人がいるということです。

誰しもお金を失いたくはありませんから、いま現在あなたに対してお金を支払ってくれている人がいるということは、あなたが提供しているサービスは社会にとって有用である可能性が高いです。

独立起業後には何よりもまず売上をあげてお金を稼ぐことが重要になります。

「将来的にはこういう事業に取り組みたい」という希望はあってもよいですが、まずは「自分はどういう分野ならお金を受け取ることができるだろうか?」について考えることが重要です。



あなたのお客さん=あなたにお金を払ってくれる人

起業した後にはあなたは自力であなたの収入を稼いでいかなくてはなりません。

そのため、何よりもまず「自分のお客さんはいったい誰なのか?ということを明確にしておく必要があります。

あなたに対してお金を払ってくれるのはあなたのお客さんですし、収入に不満があるときに交渉する相手となるのもお客さんであるからです。

この点、サラリーマンとして仕事をしている人は一般常識的に考えると、「自分が所属している会社の顧客が自分のお客さんだ」ということになるかと思います。

しかし、事業者としての視点で考えるとこれは少し違います。

サラリーマンであるか事業者であるかにかかわらず、あなたのお客さんは「あなたに実際にお金を払ってくれる人」です。

なぜならば、あなたが受け取るお金についてあなたの交渉相手になるのは、あなたに対してお金を払っている相手だけだからです。

あなたがサラリーマンなら、あなたのお客さんは第一にあなたの勤務先の企業です。

あなたの勤務先の企業は、あなたと「会社の指示に従ってこの仕事をしてくれたら、毎月これだけのお給料を払います」という形で結んでいるはずです。

起業後には「自分のお客さんは誰なのか?自分は誰のお役に立てばよりたくさんのお金を稼げるようになるのか?」をよく考えながら事業をコントロールしていかなくてはなりませんから、この視点はより重要になります。



起業プランは大丈夫か?

起業のアイデアが湧けば、次はアイデアの実現の準備ですが、この準備をせずに、すぐに会社設立の手続を進めてしまう方もいらっしゃいます。

準備に時間をかけすぎて起業のタイミングを逃してしまう場合もありますが、最低限の準備もせずに起業して、売上が上がらず、運転資金がまわらず、資金が底をついてしまうなんてことにならないようにしたいものです。

それにはビジネスモデルの構築とそれを実現するためのビジネスプランの作成が必要です。

ビジネスモデルは、何を(What)を行うかを明確にする戦略であり、ビジネスプランはそれをいかに(How)実現するかという戦術です。

戦略が優れていても戦術がつたなければ成功せず、戦術が優れていても戦略が間違っていれば成功しません。

参考

ビジネスモデル構築に必要な4つのポイント

1.対象顧客セグメントと市場規模

対象顧客を性別、年齢、地域、所得、購買行動などの切り口で市場規模とともに明確にします。

2.既存商品・サービスとの差別化(強み弱みの把握)

新たに提供する商品・サービスが既存のものよりも、どこかどう優れているか価値(強み、弱み)を明確にします。既存にないものであれば、なぜそれが必要とされているかを明確にします。

3.顧客への告知方法と販売方法、および決済・回収方法

どんな優れた商品も知って貰わなければ始まりません。どのチャネルでどう広告・宣伝し、どの販売チャネルであれば効果的に販売できるかを明確にします。併せて資金繰りに大きな影響を与える決済と回収方法を明確にしましょう。

4.資金不足対策

収益と固定費、変動費による損益構造と入出金のタイミングによるキャッシュフロー構造を明確にして黒字であっても資金不足に陥らないように検討します。資金不足が生じるようであれば資金手当を明確にします。




10.開業の手続き

――――― 開業の手続きについて具体的に教えて下さい


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

冒頭でも少し説明させていただきましたが、独立起業を行う際の手続きそのものはそれほど難しいものではありません。

将来的には「株式会社○○」というように法人化することを考えている方も、とりあえずは個人事業主として独立することがが一般的です。

個人事業主として独立するためには、まず税務署というお役所に行って以下のような書類を提出します。

1.開業届
2.青色申告の承認申請書

なお、書類の書式については税務署に備え付けてありますので、税務署には印鑑と本人確認書類(念のため)を持っていけば問題ありません。

青色申告の承認申請書については必須ではないものの、この書類を提出しておくことで後ほど税務申告時に節税の効果を受けることができるようになります。

また、取引の性質上、最初から法人を設立する場合も少なくありません。

法人は株式会社が有名ですが、最近では合同会社で設立する方も多くなっています。

会社設立の手続き等については、「会社設立は超かんたん!?何も知らないド素人があっさり起業した話【会社設立手続き】」、「合同会社設立って超簡単!合同会社について世界一わかりやすく説明!」を参考にしてみてください。

設立手続きや費用は個人事業主と比較して、煩雑でコストもかかりますが、法人にすることでのメリットも多くあります。

・税金の負担を小さくするメリット
・金融機関や取引先からの信頼性をメリット
・あなた自身や従業員の意識をより高めるメリット



参考

税金の負担を小さくするため

個人事業主として始めた事業から利益が発生した場合、その利益に対しては「所得税」という税金を支払う必要があります。


日本の所得税のシステムは「たくさん稼いでいる人ほど、高い税率で税金を計算する」というシステムになっていますので、事業から得られる利益が大きくなればなるほど、税金の負担も大きくなってしまうのです(これを「累進課税」といいます)


具体的には、所得税の税率は以下のように1年間の所得の金額によって段階的にアップすることになります。

195万円以下:5%
195万円を超~330万円以下:10%
330万円を超~695万円以下:20%
695万円を超~900万円以下:23%
900万円を超~1,800万円以下:33%
1,800万円を超~4,000万円以下:40%
4,000万円超:45%

「収入」の金額ではなく、「所得≒利益」の金額であることに注意してください。


税率が高くなることを避けるためには、税率がアップする境目の段階で法人化を行うことが適切です。


法人化を行った後には所得税に代わって法人税を負担することになります。


法人税の税率は資本金が1億円を超えない場合は15%(利益800万円を超える部分については23.4%)ですから、事業から得られる所得金額が年間330万円を超えてきた段階で法人化を検討し始めるとよいでしょう。


なお、法人化をした後は経営者であるあなたは法人の役員という扱いになります


実質上はオーナーであっても、税金の計算上は「法人からお給料を受け取っている」という形になり、そのお給料についてはサラリーマンと同じように所得税が課税されます。


現状の個人事業主のままで「事業に対してかかる所得税」を負担したほうが良いのか、あるいは法人化をして「事業にかかる法人税+社長個人が受け取っているお給料への所得税」を負担したほうが良いのかは具体的な計算をしたうえで判断する必要があります。


法人化をしたほうが有利なのか、個人事業主として事業を続けたほうが有利なのかは、税理士などの専門家に相談すれば具体的にアドバイスをしてもらうことができます。

金融機関や取引先からの信頼性を高めるため

個人事業主として活動をしている場合、良くも悪くも「経営者と事業が一体になっている」ということができます。


やや大げさな言い方をすると「事業=経営者の人生」ということになりますが、取引先や金融機関がこのことをどのように見ているか?についてはよく検討してみる必要があります。


事業が経営者と分離していないということは、経営者に仕事のやる気がなくなってしまったとしたら事業そのものが傾いてしまう可能性が考えられます。


また、経営者が個人として購入したものの費用(例えば趣味の車)が、事業資金から支出されるという可能性もあります。


特に金融機関はこのような事態を嫌う傾向がありますから、銀行からお金を借りて事業を行っている人は法人化をして事業と経営者個人のプライベートな活動を切り離すことを検討してみるとよいでしょう。

あなた自身や従業員の意識をより高めるため

個人事業主として活動している段階では、良くも悪くも「事業は社長個人のもの」です。


そこで働く従業員としては「どれだけ頑張って働いたとしても、結局取り分は社長のものだからなあ…」という意識になりがちです。


経営者自身としても、事業を社会から認めてもらえるような大規模で信頼性の高いものにしたいと考えていることでしょう。


法人化によって経営者個人の生活と事業とを切り離すことは、経営者自身の意識を高めるとともに、従業員の事業への帰属意識をより高めることに役立ちます。


個人事業主として開業した事業がある程度軌道に乗ってきたら、さらなる飛躍のために法人化を検討することも選択肢に入れてみるとよいでしょう。




11.資金調達

――――― 起業時の資金調達について教えてください。


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

新規開業者の方が事業を始めるためお金を集める方法(貯金以外)としては、以下のようなものが考えられます。

1.金融機関を利用する
2.ごく近い関係の人から出資をつのる
3.広く外部から出資をつのる
4.補助金や助成金の活用も検討してみる



1.金融機関を利用する

新しく事業を開業する場合に、もっとも利用される頻度が高いのが金融機関の融資を利用する方法です。

金融機関(銀行など)は事業者に対してお金を貸し、そのお金に対して利息をとるというかたちで商売をしていますので、上手に利用することで必要な資金を短期間で集めることが可能になります。

ただし、金融機関としては貸したお金が返ってこなくては意味がありませんから、あなたが「お金を貸しても約束通りに利息を付けて全額返してくれる人か?」をきびしくチェックすることになります。

具体的には、取り組む予定の事業内容や見込まれる利益の金額、事業を運営して拡大していくための計画などを「事業計画書」という形にまとめて融資の担当者にプレゼンテーションすることが必要になります。

場合によってはあなたの個人資産(マイホームや自動車など)に担保を設定したり、あなたがお金を返せない場合に代わりに支払いを負担する保証人を設定したりといったことが必要になることもあります。

なお、開業間もない事業者の人が利用できる金融機関としては、日本政策金融公庫などの公的な金融機関の利用を検討するのが適切です(貸付金利などの融資条件が一般の銀行などと比べて極めて事業者に有利だからです)



金融機関への相談のタイミングを知っておこう

金融機関との付き合い方についても知っておく必要があります。

起業後には金融機関から融資を受けることを検討している方も多いと思いますが、金融機関に相談に行くタイミングは「早すぎても遅すぎてもいけない」というのが実際のところです。

具体的には、自己資金がまったくなく、事業計画についても不十分な状態で金融機関に融資の相談をしにいってもまず相手にしてもらえません。

一方で、事業が赤字で資金繰りにいきづまり、「もうどうしよもないから、金融機関に相談して助けてもらおう…」という状態で融資の相談に行くのはあまりにも遅いと言わざるを得ません。

金融機関としては赤字でどうしようもない会社に融資をするわけにはいきませんから、融資交渉が成功する可能性は非常に低くなります。

金融機関への相談のタイミングとしてベストなのは事業が上り調子な時です。

事業が黒字で、設備投資を行ってどんどん積極的に攻めていく、という状態であれば金融機関としてもあなたへの融資をビジネスチャンスととらえてくれる可能性が高くなります(必然的に融資の交渉もまとまりやすくなります)

金融機関に相談に行くタイミングは「事業が軌道に乗り始めた段階」と考えておきましょう。

2.ごく近い関係の人から出資をつのる

友人や家族など、あなたの人柄や行動力を信頼してお金を出してくれる人を探し、出資者として受け入れることも一つの選択肢です。

この場合のお金は上の金融機関でお金を借りる場合(融資)とは違って、「出資」という扱いになるのが一般的です。

出資とは、ごく簡単に言えば「法律上は返済義務のないお金」ということです。

出資を行う人は出資者という扱いになりますが、出資したお金は「出世払い」のような形で返済期限を明確には定めないことが普通です。

3.広く外部から出資をつのる

最近注目されているのがこの「広く外部から出資をつのる」という方法です。

具体的にはクラウドファンディングという形でインターネットを通して事業への出資者を広くつのることで、少額の出資をたくさんの人から集めることが考えられます。

1人の人から1000万円を出資してもらうことは難しくても、1000人の人から1万円ずつを集めることはそれほど難しくなかもしれません。

上出も説明させていただいた通り、出資としてお金を集めることができれば、そのお金については通常返済義務が発生しません。

当面はお金の心配をせずに事業に取り組むことができるので、利用できる可能性があるのであればこの方法も検討してみるとよいでしょう。

なお、クラウドファンディングを利用できるウェブサイトとしてはCAMPFIRE、COUNTDOWN、Makuakeといった事業者が有名です。

細かい利用条件はそれぞれ異なりますので、詳細は各サイトの情報を参照してみてくださいね。

4.補助金や助成金の活用も検討してみる

助成金や補助金は、経済産業省、厚生労働省、農林水産省などや、その他の政府機関、地方公共団体などが200以上の助成金や補助金を出しています。

どの助成金や補助金が利用できるかを1つずつ、当該官庁のホームページで調べるのはとても非効率です。

そこで、できるだけ効率的に探すために、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している中小企業の支援サイト「J-NET21」を利用します。

都道府県別に検索できるほか、キーワードを入力してそのキーワードに適合する助成金、補助金を検索できます。

助成金・補助金の受給に関する注意点

返済不要の魅力的な助成金・補助金ですが、ただ無条件に受給することのみに注力すると大きな失敗を招きます。なぜなら、助成金・補助金を受給するにはいくつかの条件があるからです。誰でも利用できる制度、というわけではないんですよね。だからこそ、きちんとした資金繰り(キャッシュフロー)計画を立てて、色々な資金調達を実施していく必要があるんです。




11.お金のことで困ったら税理士を頼って欲しい

――――― 最後に起業を考えている方にアドバイスをお願いします。


ベンチャーサポート税理士法人の森税理士

起業して会社を作るということは、綺麗ごとではできなくて、とにかくお金が重要です。

起業するとお金がどんどん減っていくのが普通なんですが、そのとき、不安や焦りがないという方はいないと思います。

毎日がお金と時間との戦いのなかで、弱音を誰にも吐けないというのが、起業1年目のリアルな姿といえるでしょう。

誰かに弱音を吐きたい……でも両親や家族にお金の話はしにくいものですし、ましてや友だちにも言いくにはずです。

そんなときは、税理士に相談してみてください。 税理士というと、税金の計算をするのが仕事だと思われがちですが、こういったお金に関する相談をする相手としても活用してもらいたいんです。

税理士なら、「お金が減っていて苦しい」「このままだとお金がなくなってしまいそうで怖い」といった弱音を吐ける相談相手になります。

誰かに話すことで、気持ちが楽になりますし、アドバイスも受けることができます。

税理士が税金の計算や会計を大事にするのは、会社が軌道に乗ってからの話です。それまでは資金繰りの相談など、お金にまつわる相談はなんでもしてみてください。

起業1年目は、お金が減っていく不安を二人三脚で乗り越えていける人が一番のパートナーではないかと思います。

ちょっとPRになってしまいますが、当社はそういう部分を重視していることも、強みのひとつだと考えています。



まとめ

いかがでしたでしょうか。記事を冒頭から読んだ時と、記事を読み終えた今とでは少し違う景色が見えているのではないでしょうか。記事内では「資本金」や「売掛金」、「借入金」など様々なキーワードが出てきましたが、最後に改めて起業手続きのステップを確認しておきましょう。

  • 1.現状分析
  • 2.商品・サービスの選定
  • 3.サービス対象の決定
  • 4.起業形態の決定
  • 5.資金調達
  • 6.開業手続き

開業手続きの前には様々なステップがあることが可視化されましたね。自身の強みとは何か?を知った上で戦略的なサービス設計・資金繰り計画を立てていきましょう。以下に「成功する人の特徴」と「失敗する人の特徴」が端的に分かる画像を用意しましたので参考にしてください。


成功する人の特徴・失敗する人の特徴


▼ 起業の世界


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